こねりょ 学パロ


遅刻寸前、間に合うには間に合うだろうけど下手をすれば完全に遅刻みたいな怪しい時間帯。
昨日の夜は寝落ちるまでゲームしてたからいけないのだけど、学校に間に合うか…な……?かなりギリギリな時間だ。

「っと、すみません……!」
「ああ、いけるで」

どんっと何かにぶつかり咄嗟に謝って顔を上げれば男の人。
整った顔によく似合う短髪、正直めちゃくちゃに好みな顔だ。ぱちりと目が合うが眺めているそんな時間はない。

「すみませんでした…!」
「え、あぁ…ちょっ!」

何か言っていたように聞こえるけど、今の私には振り返る暇なんてない。なぜなら校門が閉まるまであと10分もないのだ!

────

「あっぶない!セーフ!」

教室に足を踏み入れた瞬間、聞き慣れたチャイムが鳴り響く。
担任はまだ来ていないみたいで本当にギリギリだったみたいだ。

「涼香ちゃんおはよう。今日はギリギリだったねぇ」

なんてくすくす笑いながら手を振るあんずちゃん。その隣の席にスクバを置いて小さく溜息をつく。

「今日ほんと、先生来るの遅くて助かったよ……。やっぱりゲームはギリギリまでするもんじゃないね…」

なんて話していれば教室に入ってくる先生。
委員長の号令によりみんなが一斉に立ち上がってガタガタとうるさい教室。
ん〜まだ眠いなぁ、なんてあくびを噛み殺しながら席に着いた。

────

午前の眠たい授業が終わり待ちに待ったお昼ご飯。朝ご飯を食べていないせいでお腹はペコペコだ。
いつもの4人…あんずちゃんにモカちゃん、まりちゃんに私で机を合わせご飯を食べる。

「あ、そう言えば今朝なんだけどね」
「うん。というかほんと間に合って良かったねぇ」
「涼香ちゃん……あんな時間までゲームしてるからだよ…寝なって言ったじゃん…?」
「ごめん……ごめん…全部フレが悪いの…」

まりちゃんにじとりと睨まれて頬を掻きながらついつい言い訳。
まりちゃんに「そろそろ寝たら?」なんて言われた時に寝ていれば、今頃全然眠くなかったはずなのに。

「それで?どうしたの?」
「ああ、そう。今朝ね、急いでたら人とぶつかっちゃって。よくよく見たらどちゃくそ顔が好みだったの」
「ふふ。涼香ちゃんの好みな顔かぁ……。想像つかないなぁ?」

目を閉じなくても考えなくても、すぐに思い出せるあの整った顔。
ツリ目がちな目が印象、ほんの少し犬っぽい人だなぁって。

「ん〜、確か近くの男子校の制服着てた気がする」
「え、ほんと?あそこゾムくんが通ってるんだぁ」

少し顔を赤くしながら彼氏の事でも思い出しているのだろう。きゃー!なんて感じで足をパタパタと動かしているあんずちゃん。

「あそこ顔良い人とか多いよね。うちの学校でも結構話題に上がる人多くない?」
「確かに」

なんて感じで話題は終わってそのあとも他愛ない話はゆっくりと続く。
今日の放課後マックでも行こうね、なんて約束をして昼休みは終わる。眠たい午後を乗り越えれば、楽しいことがある。残りも頑張らなきゃなぁ、なんて。

────

「ん、え!やば」
「どしたの?」
「ハンカチない……落としたかも…」

SHRが終わりトイレに行ったのはいいがポケットに入れていたはずのハンカチがない。
どうしよう…貰ったものですっごくお気に入りだったのに失くすなんてついていない。

「落としたなら朝……?駅に届いてないか見に行こうか」
「うん……え〜、見つからなかったらどうしよう…」

一旦あんずちゃんにハンカチを借りてとぼとぼとトイレを後にする。
帰りでもいいから探さないと…なんて思いながら外靴を履いて外へ出る。確か、まりちゃんとモカちゃんは後から来るらしいし先に行っておいて、と言っていた。

「ん?なんか軽く人集りできてない?」
「ほんとだ……どうしたんだろ」

近くにいた友達に声を掛けてみればなんでも珍しいことに男子がいるらしい。女子高のせいで学校では見ることのない男子に人集りができている……らしい。

「誰かの彼氏が待ってるとか?」
「有り得るねぇ…あんずちゃんの彼氏だったりしない?」
「ううん。ゾムくんは今日友達と遊ぶんだって」

拗ねたようにぷうとほっぺを膨らませるあんずちゃん。なるほど、だからマックに誘われたわけだ。
まあそれなら私たちに関係の無いことだ。人集りを横切り校外へ出ようとした瞬間「あ、」なんて男子の声。

「ちょ!待ってそこの子!」

後ろから軽く肩を捕まれびくりと体を揺らす。
振り向けば見覚えのある顔、それもそうだ。忘れるはずがない……あんな好みの顔。

「わっ、えっ……あ、今朝の…!」
「良かった……高校合ってたみたいやな。…はいこれ。今朝落としたやろ?」

手渡された薄ピンク色のハンカチ、間違いなくそれは私のものだった。

「えっ…あ、私の…良かったぁ……あの、ありがとうございました!」
「良かった、声掛けたんやけど急いでたみたいやし」

にかっと笑った顔がなんとも言えないくらい胸にきゅうとくる。何だ、なんなんだ…。

「あの…お礼がしたい……です」
「え、別にええで?」
「や、私の気が済まないので」

うーん、なんて考えたと思えば小さくあ、と声を出す。

「名前教えて」
「えっ、涼香です。久下涼香って言います」
「涼香な、覚えた。コネシマって呼んで!多分朝は一緒の電車やしこれからよろしくな!ほな」

そう言って手を挙げてどこかへ行ってしまった男の子…もといコネシマさん。
なにか勢いに押された気がする。

「わ、すごいねぇ……涼香ちゃん?ぼーっとしてどうしたの?」
「いや…なんでもないよ?行こっか」

内心少しドキドキした、なんかこう……わ〜!って、らしくないなぁり
少し暑い顔をパタパタと手で扇いで冷ましてみる。
朝、一緒の電車なのか…。挨拶くらいならいいよね……?なんて考えながら予定通りにマックへと向かうのだった。


next→