君の匂いは
「なんか、臭い」
……なんだか苦手な匂いがする。「臭い臭い!」なんて言いながら顔を顰めて窓を開けに行く。はて、匂いの元はどこだろう。
くんくんと鼻を鳴らして、匂いの元を辿っていけば思い出したこの匂い。
「ん〜……あ、分かった」
「なんの匂いなん?」
「タバコ、それもトントンから」
あ〜……、と言いながら何かを思い出したようで、バツが悪そうにポリポリと頬を掻いた匂いの元。
「久しぶりに吸ってん。付き合いで」
「……あぁ、そういうこと」
確かに、帰ってきてから臭っていたように気がする。匂いの元が分かったのでいいのだけど。
「煙草の匂い、苦手だな〜」
「すまんな」
「じゃあ服脱いで洗いに出してきて!」
「へいへい」
立ち上がって服を脱ぎながら脱衣所へと向かったトントンを横目に、部屋にファブリーズをひと吹き。
「それにしても、大先生とかが吸ってるのはいけんのに俺はダメなん?」
「あれは、なんかもうそういう匂いじゃん、まあ臭いのには変わらないけどね」
あとはショッピくんか。彼らはもう、なんか……そういうものだ。
トントンは普段から基本的に吸わないからたまに吸うとよく臭う。いつものトントンの匂いが好きだからあんまり吸わないで欲しいなあ、なんて。
着替えたトントンがリビングへと戻ってきたので近付いてくんくんと匂ってみる。
「もう匂わへんやろ」
「うん、ばっちり。いつものトントンの匂い」
「なんの匂いなん?」
「……おじさん」
「失礼すぎるし、ほんならタバコの匂いしてもええやろ」
くすくすと笑えば「ほんま傷付いたわ〜」なんておどけたように呟いて、ソファへと真っ直ぐ向かったトントンに引っ付いて隣へ座る。
「おっさんの匂いするやつに引っ付くってどういうこっちゃ」
「好きだからいいの」
「わっかんねぇや……」
もうされるがままなトントンを枕にして目を閉じる。お行儀が悪いかもしれないけれど許して欲しい。
「寝るん?」
「寝る。枕よろしく」
「えぇ……作業したいねんけど」
なんて文句を言いながらも無理に退けようとしない辺りトントンは本当に優しいんだから。
んふふ、なんて小さく笑いながら目を閉じるのだった。
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