「二宮先輩っ!やっと会えました!」
綺麗な桜を後ろに、犬のごとく真っ直ぐに駆け寄る。

「やっともなにもないだろ。スーツで走るな、見苦しい。」
「そう!スーツなんですよ、私も大人の仲間入りです。一番に見せたくて朝からずっと探してたのに全然見つからないんですもん」

そう言ってつい1週間前まで来ていた制服と同じようにジャケットの裾を摘んでいる女は高校の後輩だ。
高校時代に知り合ってからというもの、勉強を見るだなんだと腐れ縁が続いたのだ。

「入学式の日なんて授業もないのに朝からいるわけないだろ。馬鹿か」
「たしかに………むしろなぜ今いるんですか?もしや私を祝いに来てくれました?」
「お前のためにわざわざ大学へ来ることはない」
「うう、でも良いです!私のためでもためじゃなくても、会えたんで。」

半分、というか、ほとんど嘘だ。大学の授業表を名目としているのだが、それはついでの用事だ。

「ちゃんと新入生代表も全うしましたよ」
「最後の最後で自分の名前は噛んでいたがな。」

まさか見ていたのか、と驚き少し照れ笑いする姿を見て、いつものように鼻で笑う。
そろそろ本来の目的を果たしてやろう。

「篠田、入学おめでとう。」