肉うどん、カツカレー、ハンバーグ定食………どれも魅力的。この大学の食堂は先輩にひっついてたまに来ていたので、どれも美味しいのは知っているがゆえ選べずにいる。
そんな奈緒の横をすり抜けた指が迷うことなくB定食を押した。
「いつまで突っ立てるんだ。邪魔だ」
そう言って出てきた食券を手に押しつけ、先輩は何食わぬ顔でハンバーグ定食を買った。久しぶりにお昼を一緒に食べられるなんて!と喜びに加えて、出てきたおかずは大好物のチキン南蛮だ。
「もしかしてチキン南蛮って知ってました?」
「知らん、さっさと食べて授業に行け」
「今日はもう終わりなんです。授業の後片付け手伝ってよかった!一緒に食べられるんですもん、せん………」
せんぱい、っていつものように言いたかった。しょうもない言葉で言い淀んだ私だが、どうした?と視線を寄越す彼にはあっさり話してしまう。
「いや、あの、先輩って呼ぶのやめようかなって」
「突然だな」
「大学の人って先輩のこと先輩って言わないらしいです」
何を言っている、といった表情をする先輩に入学式後のサークル勧誘の時の話をした。簡単に言えばラグビーだかアメフトの2年生に先輩をつけて呼んだら、高校生かよって笑われたという話だ。他人の目が気になるわけではないが、大学で知り合った年上は“さん”をつけて呼ぶことにした。
「みんないつのまに切り替えたんでしょう?」
「興味ない」
「真剣に悩んでるんです!先輩のことなんて呼ぶか」
二宮さん………距離感じるなあ。まさたかさん?それはそれで近すぎる。にのさん、みやちゃんさん、にのっち。
「やめろ」
「あ、口にでてました?どれがいいですか?」
「普通に呼べ。大学生が先輩呼びでも問題ないだろう」
「そんなもんですか」
「ああ。まあ、ボーダーではさんづけが多いかもしれないな。」
先輩と呼ぶのはお前くらいかもな。
それは、特別ってことでいいのかな
「じゃあ、これからもそのままで!二宮先輩!」
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