「いや、あの、未成年なんで飲めません」
「大丈夫、大丈夫!大学生になってみんな飲んでるよ」

目の前にダンッと置かれたビールジョッキを避けてとりあえずウーロン茶をつかむ。

「えー、ちょっとノリ悪いなあ」
「友達もみんな楽しそうにしてるよ」

タダでご飯食べよう!と誘ってきた友人はチャラそうな男たちにチヤホヤされて、こっちへ一瞥もくれない。

「あはは………ちょっとお手洗い行ってきます」

脱兎のごとく逃げたものの、このままトイレと烏龍茶を行き来するのも限界だ。暖かい色味の明かりを見ても心は冷たくなる一方で、もういっそ体調悪くなったふりをして帰るという選択肢が頭を占めている。

よし、帰ろう!決めてしまえば早い。トイレを出て真っ直ぐ席に戻り、荷物を取ってさよーなら!帰ってアイス食べる方がきっと幸せだ。

席に戻ると先ほどよりもさらにニヤニヤした男達がいた。

「よかった、よかった、遅いから帰っちゃったのかと思った」
「いえ、でもちょっと体調悪くなってきちゃったので帰ろうと思います」
「大丈夫?お茶だけでも飲んだ方がいいよ」
「あ、ありがとうございます。」

ぐっと差し出されるさっき口をつけた烏龍茶。まあ、一口飲んでさっと帰ればいいか。

手を伸ばした瞬間、ぐっと手首を掴まれた。びっくりして振り返ると、眉間に皺を寄せた二宮先輩だった。

「未成年が酒を飲むな」
「え、あ、飲んでませんよ?」
「いいから来い」

ダンっと机に諭吉を置いたと思えば、いつのまにか先輩の右手には私の荷物、左手には私の腕。そして、くるりと男達へと鋭い眼光を向けた。

「いいか、今度やったら警察に突き出す」

なにがなんだか分からないけど、テニサーの人たちは目を逸らして震え上がっていたので、きっと先輩が正しいんだろう。あんな眼で見られたら立ち上がれないよね、わかる。にしてもなんでこんなとこに二宮さんがいるんだろ。

なんて頭の中がぐるぐるしながら引っ張られるままでいれば、急ブレーキした二宮先輩に突撃してしまった。さっきの人と同じくらいニヤニヤした髭面がいるテーブルの前で。

「二宮もそんな顔すんだな」
「東さん、ご迷惑おかけしました」

髭面の人は華麗にスルーして、優しそうに目を細める男の人へ一礼していた。つられて私も頭を下げる。

「いや、大したことはしてないさ。諏訪が向こうで嫌そうにしてる子を見て、二宮と食堂でご飯食べてたかもって言うから、念のため連絡したんだ。正解だったようで何よりだ」
「諏訪さんもありがとうございました」

おう、と言いながらタバコを咥えたお兄さんはなんてことない顔で驚愕の事実を教えてくれた。

「ああいう飲み会で手渡される飲み物は飲まねえ方がいい。ただの烏龍茶に見せかけてウィスキー入れられてたぞ」
「そ、そ、そうだったんですか?気づかずにアルコールデビューするとこでした」
「アルコールだけで済むといいけどなあ。そうやって女子を食う手口は新入生が入る時期のあるあるだ」
「二宮が間に合ってよかったな」

ここにいる人は皆、メシアだ。頭を下げるどころではなく、腰からめいっぱい折り曲げた。

「っ………ありがとうございました!!」

横からため息が聞こえ、いくぞ、と歩き出した。もう一度、メシア達に礼を言い、先輩の背中を追って外へ出る。

足の長い先輩はいつものようにさくさくと進む。いつだって涼しい顔をしてる先輩を