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「おはようございます、ノーザンバランドさん!」

「あぁ、おはよう。」

「おはようございます!」

「うん、おはよう。」

次々とかけられる声に返事をしながら食堂へ向かう。1人で身だしなみを正すのが大変だとは思わなかった。チラホラと食堂へ向かう学生が少しづつ賑わいを見せている。

「お早うセス、朝早いんだな。
僕も一緒に食べていいかい?」

「もちろんだセオドール。」

私は食事に時間がかかる方で、目の前のトーストを少しずつ咀嚼していく。遠目でハリーポッターと例の赤毛が此方を見ているのが見えて目を逸らした。

それから始まった授業は思ったよりも退屈だった。話聞いていた魔法史は勿論のこと変身術もなにもかも当たり前だが基礎の基礎からやる授業は私にとってはとうの昔に習得したものばかりであくびが出そうになる。もちろん、ノーザンバランド家の人間としてまじめに装って受けているが、成績優秀なセオドールも、何でもすぐにやってのける私に驚いていた。マッチを針に変える?変えてどうする。そんな態度は外に見せずニコニコと授業を受けてマグゴナガル女史に褒められてその日の授業は終わった。

夜になると、送られて来た書類に目を通し必要なものにはサインをして書類を送り返すとともに、1人外に出て電話でベルナドットに指示を送る。勿論各授業で課題は出始めていたが、どうとでもなる量だった。




金曜日、やけにスリザリンの一年生がざわついていて先輩たちがそんな彼らに何かアドバイスをしているようだった。その中にドラコやパンジーなどもいる。

「今日の魔法薬の授業、どうやってグリフィンドールを出し抜けばいいか先輩たちが話しているらしい。セスもどうだい?」

「グリフィンドール?あぁ、そういう事か。僕は遠慮するよ。そんな事する価値がない。」

セオドールの申し出をそう断れば、グリフィンドールに構う価値がないと勝手に勘違いをしたらしい。流石だなと感心された。

同じような性質で集められた寮という環境は私が思っていたよりも結束と溝を生むらしい。どちらにしても名門貴族の現当主である私に指図できるような生徒はここにはいないので私には関係のない事だった。