じじいの常識の無さが露呈する話(上)





三日月の神様()が我が家へやって来た。

というか、私にくっついて来た。



とりあえず色々あって疲れたので、
今日はもうご飯より先にお風呂へ入ろう!



そう思い立って、まあ下着や寝間着などを用意して
洗面所で意気揚々と服を脱いでいるときだった。







「やぁ、千紗や。このような所に居たのか」




…………は?

……えっ、……いやいやいや、えっ?




服を脱ぎかけの私の後ろから急ににゅっと
現れたのは、母でも何でもなく、じじいだった。


思いがけない出来事に驚き過ぎて声も出ずにいると、
三日月はスッと目を細めてからわざとらしく驚いた声を出した。




「……あなや。脱衣中だったか、すまぬな。
それで、千紗、話があるんだが……」

「後にせい!!!」




そのまま話を続けようとするじじいに
バスタオルを投げつければ、
それはその頭にバサッと当たって落ちた。


「はっはっは、元気があるのはよいことだ」


キョトン、として私を見詰め、そしてすぐに笑って
そう言うじじいに私はイラッと来て、
思わず強く言ってしまった。


「でっ、出てけーセクハラっ!」



じじいはセクハラの意味が分からなかったみたいで、
頭の上に『?』を浮かべながらも
ちょっとシュン……として出ていった。


なんか悪いことをしたみたいだ、と少し考えて、
いやそんなことはないぞ!間違ってはいない!
と慌てて思い直した。



神様っていうのはこうもマイペースで
自分時間の中動いているのだろうか。


何それ困る。


まあ今は兎に角風呂が最優先だ、と残りの服も全部脱いで
私はお風呂へ突入した。







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