Gone with the Wind.

「ここにいたんですか。探しましたよ」
 まばらに浮かぶ綿雲を眺めていれば、少しだけ上がった息が訪れる。名残惜しくなるからと、個別の挨拶は式の前にやっているそうだ。
「さよなら、ですね」
 銀の光が雲間を縫って、隣に立った鳶色の髪をやさしく照らす。
「このあとも挨拶があるなら手短にして構わない。時間が迫っているだろう」
「オズが最後ですよ」
「……そうか」
「はい」
 あの日、初めて晶を見たときと似た感覚が胸を梳く。一つ違う点をあげるとするならば、気を抜いたらすぐ消えてしまいそうな儚いさいが混じっていることだ。
「晶」
「オズ」
「……先に」
「……ではお言葉に甘えて」
 季節を幾度超えることももうできない。ひと握りでも惜しんでいてくれたらいいと考えるくらいには情を移したと自覚している。
「晶?」
「知ってましたか? 私、オズに名前を呼ばれるの好きなんです」
 雷雨の中呼ばれても拾っちゃうと思うんです、なんて長い沈黙を破ったたおやかな笑顔に相槌も忘れる。
「ありがとうございます、オズ。私を見てくれて本当に嬉しかった」
 留まらないことを決めた女を引き留める理由はない。あってはいけないのだ。
 終わりが芳しくなってもまだ晶は傍を離れない。自分を最後にしたのだから時間は余っているのだろう、と都合のいい考えはいつまでものさばる。
「――」
 にも劣らぬ桜色がようやく言葉を発したのと同時に強い風が吹き抜ける。言葉のみならず彼女まで連れていこうとする彼らが憎くて仕方ない。
「さようなら、オズ」
 春は残酷だ。


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