相棒は斯くあり

 そろそろかと片方の瞼を器用に上げてみる。十数分前までの言い争い――と言っても、犬すら食わない長年のつたない口喧嘩だが――は霧と化し、二つの寝息が微妙にズレたハミングを奏でていた。
 やれやれと吐いた息は木漏れ日のようにぬくい部屋に溶ける。互いにつかれているというのに休む素振りすらない。仕事熱心なのはいいが、少しは心配するこちらの身にもなってほしい。
 だから今日も今日とて彼らが寝てもいいように先に寝たフリをした。
 お気に入りのベッドから抜けて、己の短い脚をそっとシーツの上にのっける。熟睡している二人の顔は実年齢よりだいぶ幼くて、自分を間に寝ていたあの日を思い出させた。
 どうしてか昔から二人は自分が寝ていると自分たちも寝てもいいと思うみたいで、魔法にかけられたかのように微睡へ落ちていく。それに気づいてからずっとこの戦法だ。
 鼻先で廊下へと続くドアを開ける。わずかな隙は前もって作っておいたし、音を殺す方法はもはや癖の領域かもしれない。
「レオン」
 視線の先にはやんちゃ坊主の風貌を携えた心優しき少年。いとけないながらも二親を起こさないよう静かに呼ぶこの子は随分と聡く育った。
「二人は寝たんだね」
 今日はいつもより眠りに沈むのが早かった。相当疲れがたまっていたに違いない。そんなところまで似ているとは、まったく頑固者同士仲がいいことで。
「そっか。じゃあレオンもこっちで寝よう?」
 ひとつ抑えめに応えて尻尾を振る。役目もちょうど終わったことであるし、目をつぶっていたら先程からいい具合の眠気がこちらを伺っていた。
 後ろ足でちょんと扉を蹴って、ちいさな背中の後ろをついていく。
 おやすみ、愛しき者たち。


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