一服中にその可憐な客はやって来た。
「どうぞどうぞ」
断る理由もないのでガラッガラのスペースへマスターちゃんを
歳のわりにしっかりした横顔だなと伏せた目線をひっそり隣の少女に向けて――失敗したと頭を掻く。自分が移動したことで西日がマスターちゃんに直接刺さってしまっていたからだ。しかし今更元の場所に戻るわけにもいかず、どうしたもんかと寂しくなった口に煙草をつけ、先程から気になっていたことを尋ねる。
「なんかあった?」
ちらりと窺った双眸に潜む影は時間も相まって魔物が好みそうな代物であった。
「さっきまでどんなふうに死にたいかで食堂にいたみんなと盛り上がってたんだ」
「……それはそれは」
配慮があるんだかないんだか。まあ死んでいる自分らサーバントにとってそれは軽い出来事だから致し方あるまいと言えば致し方ないのかもしれない。
「で? マスターちゃんはどんなふうに死にたいの?」
真面目なマスターちゃんのことだ。さらりと受け流すこともしないで考えてしまったのだろう。短い付き合いの中で、それくらいの機微は見て取れる。
「まだ道の途中だからそんなこと考えられないなーって」
そりゃそうだ。そんな
逃げたきゃ逃げればいい。
そんなことを彼女に言ったこともある。がしかし、彼女の背負っているものを考えれば無責任な提案だ。勿論、こっちの意見を変える気は更々ないけれども。
「でもこの旅を終えてみんなが幸せになったのを見届けてから死にたいな、くらいは思うよ」
この場合のみんなというのが人類のことを指しているのは知っていた。器が大きいことでと感心して、元々大きかったのか大きくならざるをえなかったのかと詮無きことに思いを馳せた。
「一ちゃんは新撰組を見届けたんだよね」
「だからその『一ちゃん』呼び、やめてくれって言ってるだろー?」
アレを見届けたと言っていいものか怪しくて、これ以上突っ込まれたくないがためにわざとはぐらかす。
「じゃあさ、一ちゃん」
「んー?」
「見届けて」
至極真っ直ぐに
「私がどんな選択をして、どんな道を進んで、どんな終わりを迎えたか」
どこかのお
ちっぽけで、この場で一突きにしたら簡単に終わっちまう願い。
そのくせ澄みきった静かな湖畔のような表情で言うものだから、言葉以上の重さがのしかかってくる。
「前回できなかったのなら今回はちゃんと見届けてよ」
サーバントは生前できなかったことを為すために現れるのではないのに、この子という子は。
――簡単に言ってくれちゃって。
「あ、死に顔は見ないでいいからね。きっとブサイクだから」
真剣な表情を店に畳んで、茶化すような口ぶりへと早変わりする。まったく、心配するところはそこじゃないだろう。
「覚えてたらね」
「はいはい」
わかっていますよと知り顔でマスターちゃんは軽やかに相槌を打つ。そのたおやかな仕草に何とも言えない感情が湧き上がって、結局見なかったフリをした。