「ラムズの指って女の人みたいに綺麗。全然染みがない……。細くて……爪もきれい」
彼女は指先に自分のそれを沿わせる。くびれのある人差し指の側面はひどく滑らかだった。
「そう?」
ラムズは首を傾げ、銀の影を碧眼へかぶせた。唇の端が奇妙に歪む。空いていたほうの手が彼女の頬にそっとさし当てられた。四本の指が皮膚をなぞるように滑る。親指が喉をくすぐる。青の眼差しに射すくめられ、彼女の呼吸がきゅうと締まった。どく、どくと早鐘が大きく木霊している。
──冷たい。
彼の手はもともと冷たいけれど、それとは違う。頬を何かがねっとりと伝っているような感覚。はっとしてラムズの手に自分のそれを重ねた。血だ。
広げてみれば黒ずんだ血潮がぐっしょりと手についている。慌てて頬や首筋を触り、それが服まで染めていることに気づいた。
「ッね、ち。ア、あ。い……、き。が」
なにかに塞き止められているのか、息苦しい。あまりの圧迫感に喉が膨れ上がっている気がする。窒息しそうだ。もがくように宙を喘いだ。指先がじわじわと冷えていき、代わりに顔は熱く脈打った。足に力が入らなくなり、崩れるように跪く。
「そんな綺麗かな、俺の手」
彼の手からは滾滾と血が湧き出ている。掌から零れたそれは、ゆっくりと長い雫を作って焦らすように床に垂れていく。
「これで1682人目」
光の消えた女の瞳孔は徐々に小さくなり、乳白色に染まろうとしていた。