悪魔はロボット S&L

あなたたちはロボットと何も変わらない
いくら誰かのために生きようと、結局それは借り物じゃない。自分の心はどこにもないじゃない。空っぽじゃない。

愛は相手を受け入れるもの?
違う!
我が子を愛する母親は、子供が幸せになれるよう願い、道からそれぬよう見守り、間違えたことをすれば叱るし、いいことをすれば褒めるの。何もかもを受け入れることこそが愛だなんて、愛はそんな生半可なものじゃないわ。相手のためを思い、相手のために自分を変え、ときにぶつかり、そして両者で変わっていくものなの。

……そういう愛を望むなら、そうしてやってもいい

だからあなたはロボットだって言ってるの。
借り物じゃない。どこにあなたの心はあるの?相手が思うがままに自分を変えて、それでいいの?それで生きてるって言える?
いいえ、いえない。
あなたたち悪魔は生き物じゃない。神から設計されたただの機械みたいなものだわ。
一つの概念にのみ極端な行動を示し、それ以外にはなんの反応も示さない、そう設計されてるだけ!決まりきった行動しかできないなんて、そんなの生きてるって言える?!
心があるっていうのは、どんなに大事なものでも、どんなに愛するものでも、ときにその価値が代わり、涙を呑みながら何かを犠牲にしたり、自分を変えたりしていくものなの。成長するものなの。昨日の私と今日の私は違う、そう胸を張って言えるものが、命っていうの。
どうしても越えられなかった壁、自分のプライド、何かへ執着、しがみついていた過去、そういうものをぶち壊して前に進む。それが命じゃない。それが人の道ってものでしょう。

でも、あなた達にそれはない。ずっと同じ場所を漂っているだけ。同じ道を生きているだけ。昨日と1年前と1000年前と、やってることはずっと同じ。宝石を求めている。
こんなのロボットと言わずなんと言う?!髪に「宝石を目指して生き続けろ」って言われて、その通りに生きているんでしょう。疑問を持つことさえ知らず、神に与えられたその役割をまっとうし続けている。運命も、自分の道もまったく疑わない……。

だから人間じゃないって言ってるの。だから人の心がないって言ってるの。

メアリだって、人魚としての誇りはあるけど、陸の世界で少し人間のことを理解したり、自分の身にふりかかった呪いについて考えているじゃない。自分が人魚に戻るために愛する人を殺すって、そうすぐに決断しているわけじゃない!
どうするべきか悩んで苦しんで、そして選択してる。
すべての使族が、自分の生き方にも疑問を持ったり、自分の運命を呪ったり、何かを変えようとしたり、どうにかなろうと足掻いている。
でもあなたは?悩んだことはあるの?足掻いたことはある?疑問を持ったことは?
宝石を捨てて誰かや何かに尽くそうとしたことはある?自分が宝石以外のためにも生きれるようにと、そう努力したことはあるの?ないでしょう?!

ないなら、そんなの命じゃない。そこに生はない。ただ神様の作った通りに動くお人形だわ。それを私たちの世界ではロボットっていうの。機械人形よ



ごめんシエリ。女の子を殴るなんてよくないと思ったけど、ビンタなら女の子同士もしてるから許されるかなって。よかったらあとで俺の事殴ってくれ

なぁ、そんなこと言っちゃダメだよ。
仮に本当にラムズたちがロボットみたいだとして、ロボットそのものだとして、
シエリはさ、俺たちの世界にいたロボットにもそう言ってやるのか?
人間とほぼ変わらない姿で、同じように喋り、感情があるように見え、誰かのために、何かのために働いてるロボットに向かって、シエリはやっぱり「生きていない」といい、「人権はない」って、そう言うのか?
何かひとつのために生きている姿は、本当に生きてないっていえるのか?

植物や虫は喋らないし、俺たちには、考える能力があるのか、感情があるのか、分からないよな。でも、それでもあいつらは生きてないって、シエリはそう思うのか?
植物はずっと同じ場所に立ってるよ。何もしてないよ。ただ立って、水を吸って、太陽を浴びて、葉を茂らせているだけだ。だから木は生きてないのか?殺してもいい存在か?侮辱していい存在なのか?

いくらシエリに怒鳴られてもラムズが何も感じないからってさ、
そもそも俺たちがそう発言すること自体が、人の心があるって思えねえよ。

でも、結局考え方次第だよな。植物だってロボットだって、ラムズたちだって、生きてるか生きてないか、命があるのかどうかなんて、俺たちが決めることじゃない。俺たちはただ感じることができるだけで、何かを決めることなんてできやしない。
でも俺はさ、ラムズたちと話して、関わって、それでも生きてるって思ったよ。たしかに宝石や酒にしか興味無いかもしれないし、そのためだけに生きているのは異常かもしれないけど、シエリも知ってのとおり、異常な人間はたくさんいるだろ。

あいつらが発する言葉が、あいつらの言う愛が作り物で借り物で、誰かの真似で、中に何も詰まってないとしても──、
それでも、俺たちは「詰まってる」って、そう思えばいいじゃんか。
そうしてくれるって言ってるんだから。そう見せることもできるって。