同棲クリスマス

ハァ、と吐き出したため息が白く空気に散っていく
12月25日ともなればいつもなら寝静まる時間の町中も今だ祭りの気配は色濃い
通りかかるコンビニからは軽快なクリスマスソングが流れてきて、仕事から疲れて帰る背中に余計な負荷がかかるようだ

「私の今日のクリスマス成分てこれだけかな」

そうして自分の手元に目線をおとせば、クリスマスカラーの愛らしいミニブーケが一つ
なけなしのロマンチックが逆にむなしさを倍増させている気がして、またため息がこぼれた

「葉月」
「え?」

丸まっているだろう私の背中に、ききなれた声がかかる
予想もしていなかった事に驚きながら振り返ると、いつものように微笑むみのりくんの姿があった

「え?え!?今日はおそくなるんじゃなかったの!?」
「うん、その予定だったんだけどね」

驚く私を他所に、にこにこと微笑みながらみのりくんが近づいて来て手袋もつけていない冷えた両手で私の頬をつつむ
とても冷たいけれどいるはずのなかった恋人が今ここにいること以上に気になる事なんてなにもない
彼がアイドルをやっている間は、一緒にクリスマスを迎えることなんて出来ないと思っていた
思っても見なかったクリスマスプレゼントに少しだけ涙腺が刺激されてしまう
冷たい彼の手をあたためるように荷物のない左手で彼の手に重ねて頬を摺り寄せる

「…遅くなったけど、メリークリスマス」
「ふふ、ぎりぎりだけど間に合ってよかった。メリークリスマス」

お互いのはく白い息がかかるほどに近く笑いあいながら、特別な日にできる特別な挨拶をかわせる事が嬉しい
自然に手をとり、並んで一緒に同じ家に歩き出す

「実は冷蔵庫にケーキ買ってあるんだ」
「本当?じゃあ、帰ったら食べようか」
「こんな時間なのにいいのアイドルさん」
「今日だけは特別」

家にかくしてあるプレゼントも、帰ったら早速彼に渡してしまおう
そんな風に考えているとふとみのりくんの視線が私の手元を見ていることに気がついた

「なに?」
「そのブーケ、どうしたの?」
「いただいたの、クリスマス以降は使えないから良かったらって」

職場で頂いたミニブーケを花好きのみのりくんによく見えるように近づける
きっと喜ぶだろうと思ったのに、彼はブーケを見て物凄く渋い顔をして見せた
予想外の事に目を瞬かせてしまう

「なぁに、その顔」
「面白くないなぁと思って」

そう言うが早いか、みのりくんが私の手からブーケを抜き去りつまらなそうに彼が持つ
そうされる理由に気がついて、思わずにやにやと彼の顔をのぞきこんでしまう

「妬いてるの〜?」
「そりゃね?恋人が他の男から貰ったブーケなんて持ってたらヤキモチくらい妬くよ俺も」

面白くなさそうな拗ねた顔が可愛いくて嬉しくて、くふくふ笑いながら隣を歩く彼の腕に腕を絡めてくっついて歩く
もう日付も変わってしまった頃かもしれない
忙しい恋人と、たった少しだけでもクリスマスを迎えられた事が一番のクリスマスプレゼントになったから
現実主義な私だけれど、少しだけクリスマスの奇跡なんて信じてみてもいいかもしれない

「ねぇ、このブーケそういう意味はないんだよね?」
「ふふふふ」

みのりくんの可愛らしいヤキモチも見られたことだし、今年のクリスマスは大収穫になったかな