ソードワールドしようぜ!

【冒険者の奮闘でブロンズゴーレムは市街地へ入る前に何とか破壊する事は出来た。
誰かが安堵のため息をもらす。それを合図に冒険者達は緊張の糸を解き、静かに息を吐く。守った。守りたいものをこの手で。
その高揚感がただ身体を満たす。空には一番星が輝く。まるで自分達を祝福するその光に冒険者達は一時、癒されるだろうね】

「あーよっこいしょ(その場にどすんと座り込む)」
「!怪我!!(慌てて駆け寄って不安そうな表情を浮かべる)」
「ん?ああ、大丈夫大丈夫。このくらい平気……あれ?(突然立ち上がったことで貧血を起こしてその場に膝から崩れる)」
「っ、ばか!動くな!!(崩れ落ちたアントーニョを支え、近くの壁に寄りかからせる)」
「あはは。ごめんなロヴィーノ。少し休んだら良くなるよ(心配させまいと微笑み、頭をなでる)」
「……青年、使いなさい(無表情でヒーリングポーションをアントーニョに向けて投げる)」
「あと止血もした方がいい。これを(ハンカチをアントーニョへ差し出す)」
「え、俺に?(二人の行動にぽかんとした表情を浮かべる)」
「!?(ふたりの行動に目を丸めて怖いものを見たかのような表情を浮かべる)」
「要らないのなら棄てればいい。残念なことに毒など入っていませんよ」
「悪いな。俺も回復魔法を使う力がもうない。だからこれくらいしか出来ないが…」
「いや、うん。ありがたくハンカチもポーションも使わせてもらうわ(2人から受け取り)……ありがとうな」
「こちらこそ(ふふっと微笑み)」

「アーサーさん、貴方も少し休憩してください。……疲れたでしょう?(アーサーへ向け労わるように微笑む)」
「(キクの方を向いて)いや、それを言うならキクだってポーションを使ったと言えど大怪我してたじゃないか。そっちが休むんだ」
「こんな傷、そのうち治りますよ。……それに、貴方に何かあったら私は生きていけない」
「まったく。キクは心配症だな。俺は平気だ!ほら!(ぴょんぴょんとその場を軽やかに飛んでみせる)」
「!!そんな!無茶をしないで!……お願いですから……(アーサーの肩を掴み悲痛な表情)」
「(ぱちぱちと瞬きしてすぐに目を細め)…大丈夫だって。俺はこんなことじゃ消えないし、死なないよ(優しく微笑む)」
「(ぶんぶんと首を振り)……!(何かに気付いたように手を離すとアーサーの足元へと跪く)」
「……?キク?(不思議そうにキクを見下ろす)」
「(腰から二本の刀を抜くと恭しくアーサーの前と掲げ)我が命、貴方様に捧げさせてください。……この命は、貴方を未来永劫守る盾。この刀は、貴方を未来永劫守る刃」
「…………っ(予想もしていなかったキクの行動に息を詰める)」
「私のすべては、貴方様のもの。我が神……この醜く穢れた魂を、どうかお認めください(視線はあげることなく最初の姿勢のまま)」
「……(その場にしゃがみ、キクと同じ視線になる高さで見つめ)…キクのばか。……ん、(額に軽くキスを贈る)」
「!?(突然のキスに驚きを隠せず顔を上げ)い、いけません!私は穢れているのに……っ!」
「穢れとか、そんなの関係ない。俺がキクに触れること、傍に居ることに理由はいるのか?(キクの両頬に手を添えて切なげに見つめて)」
「……(視線を伏せ)私は、私は刀を振ることしか出来ない臆病者です……貴方への永遠の従属を示さないと、私は、貴方を守らないと……(自分でも何を言っているのか理解していない表情)」
「キク落ち着いて(優しく抱きしめて)……キクは、何か理由がないと俺の傍に居てくれないのか?理由がないと俺はお前の傍はいられない?」
「ちが、……違い、ます……あ、貴方の、傍に……いたい……でも、私は、貴方の隣に立てる程、綺麗でない……っ!」
「(首を左右に振り)綺麗とか穢れてるとか、そんなの関係ない。俺はキクって奴の傍に居たい。それだけだよ」
「……っ、私、は、貴方の傍にいても……赦されるのですか……?私は、貴方を崇め続けて……赦されますか……?(不安そうに見上げ)」
「赦すも何も。……俺はキクだから傍に居てほしいんだ(頬に朱を染めながら微笑む)」
「アーサー……さん……(耐えていた涙が溢れ)私は、私は……っ、貴方の傍にいたい!貴方を守りたい!貴方だけを感じて生きたい……っ!!」
「(キクの背中を優しく叩きあやすように)……うん。生きててくれてありがとうなキク。こうして、また会ってくれて、ありがとうな」
「アーサーさん……アーサーさん……っ!!もう、離れないで……もう、消えないで……っ!!(嗚咽を漏らしながら)」
「うん……うん……(強く抱きしめながら)」
「もう……もう、もう、私は……貴方だけは、失いたくない……っ!!!(子供のように泣きじゃくりながら)」
「……うん(キクと自分の額をこつんと合わせ)…ほら、もう泣くな。俺のために、泣かないで」
「う、ぐすっ……ひぐ……っ……あ、さ……さん……(ぐしゃぐしゃの泣き顔でアーサーの顔を見つめる)」
「ああ、なんだ(くしゃりと笑って)」
「……私の、ぐす……っ、かみさま……(祈るように)」
「……(面白くなさそうな表情を浮かべ)…うりゃ(こつんと軽く額同士をごつんとぶつける)」
「!?(不意討ちの攻撃に目を丸め)……い、痛いです……」
「だから、神様じゃなくて 。あ、あ、さ、あ。…ほら(くすくすと笑って)」
「……?(意味を理解しかねて首を傾げ)アーサー、さん……?」
「ふふ、宜しい。俺は神様って名前じゃないんだから。キクにはちゃんとアーサーって呼んでほしい(キクの頬をなでながら)」
「で、すが……私の神様は貴方だけで……でも、アーサーさん……(何かを言いかけて言葉を飲み込む)」
「ん?どうした、キク(不思議そうに見つめ)」
「い、いいえ……なんでも、ないのです……こんな感情は、おかしい……から……(首を振り自分に言い聞かせるように)」
「?まだ本調子じゃないのか?(キクの顔を覗き込み)」
「っ!!!だ、だいじょうぶ……貴方を守る力は存分にありますよ……(儚げに微笑み)」
「変なキクだ。…あ、(なにか思い出したように)キク!マリアリリィ!」
「……!!レディ!!!(顔色が一気に悪くなる)」
「行こう!魔物の気配は感じないが、やっぱり心配だ!(マリアリリィへと走る)」
「え、ええ……!(縺れる足でアーサーの後を追う)」
「あ、(キクの様子を見て)……ほら!(キクの手を繋いで走る)」
「……(恥じらうように視線を彷徨わせ、手を握り返して走る)」
「アントーニョ!ロヴィーノ!俺達はマリアリリィの様子を見てくる!2人はそこで待機しててくれ!」
「任せときー。(アーサーに返事して)」
「おう(控えめに頷く)」
「レディ、無事でいてください……っ!(走りながらぼそぼそと呟く)」

*

「……(ぽかんとした顔でアーサーとキクを見つめている)」
「……なんや、まるで人が変わったようやなあ(ケラケラと笑って)」
「あ、ああ……別人みてえだよ、ふたりとも……」
「でもきっとこれが……二人の本来のすがたなんやろうなあ(ずるずると壁にもたれて笑いながら)」
「そう、なのかな……でもあの怖ぇふたりより、こっちのが……って、トーニョ!怪我の手当て!!」
「あ、はは…平気や、って(額から汗を流しながらなんとか微笑んでみせる)」
「馬鹿っ!!!こんなところで強がんな!!じっとしてろ……(傷口を調べると自分の腰の鞄から野草を引っ張り出す)」
「ロヴィー、ノ?(大きく肩を上下させて呼吸を繰り返しながら)」
「……ん、傷は酷くねえけど……血が……んむ(薬草を貼る前に傷口を舐めて綺麗にしながら)」
「あ、かんよ…バイキンが、はい、る(熱い息を吐きながらロヴィーノを見つめ)」
「大丈夫、この方が早いから……(粗方傷口の周辺を舐め終わるとぺっと口内から砂を吐き出し)ちょっと沁みるぞ、我慢しろ……」
「っつ、うっ……(ぎゅっと目を瞑り、漏れる苦痛の声を聞かせぬように口を手で覆う)」
「(てきぱきと薬草を貼り)……ごめん、いてぇよな……俺なんて守んなくたって、俺だって、戦えんのに……」
「っ、(ゆっくり目を開いて)なんでやろうな。なんか守らなーってなったんよ。自分でもわからんわ(苦笑いを浮かべて)」
「!?んだよ、それ……へんなの。それだったら、守んなくていい。背中、預けてくれよ(不貞腐れたように頬を膨らませ)」
「え、気分悪くさせた?別にロヴィーノが弱いとかそうやないよ?ほんまにほんまやで!(怒らせたかと思って焦っている)」
「別に怒ってねえよ。ただ、なんつーか……俺だってお前のこと守ってやるって言うか、……だーっ!くそっ!言葉難しいんだよちくしょー!!」
「ぷっ、あははは!なんやそれあはは…あでっ!!(傷口に響いたのか涙目になりながら)…それはごっつい心強いわ」
「お、おおお、俺だって結構強いんだからな!逃げ足も速いんだからな!ミアキス舐めんなよ!…………あ(しまったという顔)」
「ミア……え?(ぽかん)」
「ななななな、何も言ってねえよ!俺何も!(慌てふためきながら)」
「なーんや何もないんかー。ミアキスっての聞こえたけどあとは何もないねんなー(けらけらと笑って)」
「……あ、あああしまったああああああ!!!!(頭を抱え)」
「ええええ聞いたらあかんことやったんんんん!!(つられて絶叫)」
「おまっ、だってミアキスだぞ!!俺人間じゃねえんだぞ!!!(混乱しながら)」
「ふえ?(きょとん)でも俺もドワーフやし?」
「……あ、そう言われれば(漸く気付いたのか顔を上げる)」
「やから別に気にせえへんよ?どんな種族かてロヴィーノはロヴィーノやん?(不思議そうに首を傾げ)」
「そ、っか……そうだよな。別にこの街の奴も種族とか気にしてねえもんな……(納得したように頷き)」
「せやろせやろ?……で、何をバラしたって焦ってたん?」
「い、いや……ミアキスだし、バレたら猫の姿でいると変に警戒されるかなって……」
「え、猫になれるん?なにそれすごいやん!(目をキラキラさせてロヴィーノを見る)」
「お、おう……マジかよここまで話して気付かねえのかよこいつ(ぼそっ)」
「あ、猫と言えば!ロヴィーノの友達にも猫友達おる?あんな、よく俺のとこ来る猫がおってな。そいつがまた可愛らしいんよ(ふにゃふにゃと笑って)」
「……おう、お前さ。俺の髪の色見て何か気付かねえの?つーか気付け、頼むから(額を押さえて溜息を吐く)」
「髪?綺麗な茶色の髪してるやんなー……あれ」
「はー……分かってくれたか?(アントーニョを見上げ)」
「なるほど!ロヴィーノとあの猫とはペアルックならぬペアヘアー?やっとるんやな!」
「はあ!?……あー、うん。それでいいや(諦めたように)」
「??なんやえらい疲れた顔して、どないしたんよ(ロヴィーノを抱っこして自分の膝に乗せる)」
「む……てめーのせいだっての……(大人しく膝の上で丸くなり)」
「え、俺?あー手当ありがとうな。助かったわ(頭を撫でて笑う)」
「……おう。……あー、だめだ。なんか勘違いされてんのムカつく(むくりと起き上がり)」
「……ロヴィーノ?」
「服脱げるから本当は外でやりたくねーけど……ほら(一瞬でロヴィーノの姿が消え、アントーニョの膝の上に大きい猫が鎮座している)」
「え、(膝に乗しかかる重みが急に軽くなったことに驚き)……え、え、ロヴィー、ノ?」
「ほら、分かったろ。お前の傍にいた猫、俺だよ」
「へえええ!そうやったんやあ!!あははは!なんや魔法みたいやんなー!(楽しそうにロヴィーノをなで回す)」
「魔法じゃねーって、ミアキスはこういう種族なんだよ。……これでも、また俺が猫の姿で近寄ってもいいのか?(心底不安そうに)」
「別にロヴィーノがミアキスでも猫さんでも俺がロヴィーノに接する態度は変わらんよ?やから心配せんといて(優しく微笑みながら頭をなでる)」
「……うん、お前ならそう言ってくれるかなって思ってた。だから、その、お前の傍うろちょろしてたわけだし……(気持ちよさそうに目を細め)」
「ふふ。でも俺は嬉しかったで。そうやって秘密打ち明けてくれて。なんや信頼されてるってかんじして」
「……だってさ、うっかり言っちまったけど……お前なら、信用出来るし。……お前のこと、その、き、嫌いじゃねーし!」
「ありがとう。いやあ、嬉しいわー。今度から猫さんって言わんでロヴィーノってちゃんと呼べるしなあ(喉元を撫でながら)」
「……お、おう。呼べよ、いっぱい呼べよな。あっ、別に嬉しいとかじゃないぞ!猫なんていっぱいいるから区別できるいい手段ってだけだからな!!」
「はーい。俺が暇な時は相手したってなあ(むふむふと笑って)」
「神官は忙しいんだろ、でもまあ、暇なときは相手してやっても構わねえぞ?(尻尾を揺らしながら)」
「ほんま?俺、神官や言うてもそない地位は高くないから割と暇やもんー(ロヴィーノを高い高いしながら)」
「うにゃっ!?じゃ、じゃあ暇なときは遊んでやるってううう、嬉しくないからな!お前が暇してるならってだけであって……(照れ隠しに捲し立て)」
「うんうん。ロヴィーノが俺に付き合ってくれんねんもなあ。優しいなあロヴィーノは(にこにこと笑って)」
「……や、やさしくねーぞこのやろー(目元を真っ赤にして照れながら)」
「優しいよ(普段猫の姿でやっている鼻にキスをして)ロヴィーノは、ええ子やもん」
「〜〜っ、な、ななな、あ、あ、あ、あ、……ありが、とう……(照れているのか小さな声音だが尻尾は千切れんばかりに振っている)」
「はああ。かわええなあロヴィーノは。優しくて可愛くて強くて、すごいなあ(頬ずりしながら)」
「ね、猫はヒトに好かれるからな!可愛いって言われても嬉しくねーんだからな!(尻尾が振れるのは止まらない)」
「……ロヴィ、尻尾尻尾」
「……はっ!!(びくんと尻尾が立つ)」
「あはは!かわええなあ……かわいくて俺くらくらしてきたわー(再び貧血)」
「わーばかっ!!ちょっと待ってろ!!(人間の姿に戻り慌てて介抱する)」
「あれー?なんやロヴィーノが2人に見えるわー。ミアキスは分身も出来んねんなー」
「ちげーよそれお前が参ってんだよ!!い、今教会に運んでやるからな!!(アントーニョの肩を担ごうとするものの力負けしてぺしょんと潰れる)」
「ああ、ロヴィーノ。誰か司祭クラスの人呼んできて。俺はここで待ってるから」
「お、おう……!今呼んでくるからな!(慌てているのか全裸で駆け出そうとする)」
「待ち待ち!ロヴィーノ、服!服!!」
「へ?……あ、わ、悪ぃ!(大慌てで服を着て)よ、呼んでくる!トーニョ、絶対動くなよ!動いたら怒るからな!!」
「いってらっしゃーい(ひらひらと手を振り)…さ、帰ってくるまでちょっと昼寝しよ……んん」

*

【冒険者ギルド『マリアリリィ』】

「フランソワ!(ギルドの扉を開き)」
「レディ!!(アーサーの手を離すと真っ先にフランソワへ駆け寄る)」
「……キクちゃん?アーサー?(額を包帯を巻いた姿で2人の方へ振り向く)」
「あ、ああ……よかった……(へたりと座り込み安心したように詰めた息を吐き出す)」
「ギルドは……(店内をぐるりと見渡し)」
「大丈夫よ二人共。伊達にギルドマスターなんてしてないんだから。……ちょっと店内は荒れてしまったけどね(苦笑いを浮かべて)」
「……レディが無事でよかった。もし何かあったら先代に何と顔向けすればよかったか……(普段の取り繕いが出来ず崩れた表情のまま)」
「私がそう簡単にやられる玉じゃないよ!もう、キクちゃんたら(ころころと笑いながら)」

「ふ、フランソワさん!廊下のガラス、掃除してきました!」
「フランソワさん!窓もピカピカにしておきました!」

「……(ぽかんとモブ冒険者を見ている)」
「……相変わらず人を使うことがお上手で(漸くいつもの調子を取り戻し)」
「あら、彼らは善意で掃除してくれてるんだから。失礼しちゃうなー」
「はは。……っと(モブ冒険者と接触する)」
「ああ!?てめえどこ見てんだこらあ(アーサーを睨む)」
「……貴様こそ、我が神の道に立とうなど百億年早い(射殺さんとする眼差しで立ち上がり刀を抜く)」
「ひ、ひいいい!?」
「キク落ち着け!(二人の間に入り)……すまない、こちらもちゃんと周りが見えていなかった。申し訳ない(儚げに長いまつ毛を伏せ)」
「貴方が謝ることじゃない。この莫迦者が悪いのです……」
「え、あ、ああ。べ、別に構わねえよ……(どこか顔は赤い)」
「っ!?……殺す(殺意を孕んだ視線を送り続ける)」
「わあ馬鹿、キクッ!そんなに凄んだらみんな怯えてしまうだろ!?」
「関係ありません、貴方にふしだらな欲を抱く者は全員死ねばいい(今にも斬りかからんという勢いで)」
「よ、欲?えっといまいち理解が出来ないんだが……」
「えっ、えーっと。これは一体……(二人の様子に呆気にとられている)」
「ほら、さっきの大怪我もあったんだ。じっとしてろ、キク(心配そうにキクを見つめ)」
「……貴方の御心のままに(不服そうに刀を鞘に納め)」
「え、えーっと……どうしたの?二人共」
「はは、これには深い事情があってだな……」
「……神様に再び巡り合えたのですよ、レディ(静かに呟く)」
「!!……そう、良かったね。キクちゃん(嬉しそうに微笑み)」
「ええ……私だけの神様が、私を不幸に思って帰ってきてくださったのです(唇に人差し指を当ててフランソワだけに聴こえるように)」
「ふふ。なら今夜はキクちゃんの神様が舞い降りたお祝いをしなきゃね(くすくすと笑って)」

「……(物珍しそうにギルド内を見ている)」
「……アーサーさん?」
「ああ、いや。あいつの記憶をうっすらとは保有はしてはいたが…ここは沢山本があって、いいな!(本棚を見る目はきらきらと輝いている)」
「……え(聞き間違いかと目を丸め)……本はありますが、きお、く……?」
「?ああ。俺が目覚める前までのアーサーの記憶は僅かではあるが保管されてるが、どうした?(不思議そうに)」
「……ああ、私は今すぐ切腹しないといけません……貴方に対して、私は何と酷い言葉を……(床に正座をすると刀を一本抜き取り)」
「え、ちょっと待ってキクちゃん落ち着いて!!店内での流血沙汰はだめえええ!!」
「ええいっレディ!止めてくださるな!!男にはやらねばならない時があるのです!!!」
「……(何かを考え込むように間を置いた後)切腹に走るその思考が幼稚で浅はかだと、まるで分かっていないようだな?(にやりと微笑み)」
「っ!?(びくりと肩を震わせ刀を構えたまま振り向く)」
「…どうしたチビ?間抜けな面だな(けらけらと笑って)」
「っ、き、さまあああ!!!……私のっ、私の神を……返せええええっ!!!!(激昂して弾かれたようにアーサーへと刀を向ける)」
「と、(ひらりと躱し)…キク、やり過ぎだ(苦笑いを浮かべて)」
「あらあら、今のは演技かしら」
「……!!(事の重大さに気付き刀を取り落とし)ぁ、あ……ああ……(ぼろぼろと涙を零す)」
「!?(泣き出したことに驚き)す、すまないキク!まさかこんなことになるとは思わなくて、だから泣くな?な??」
「今のはアーサーが悪い(ずばり)」
「いや、似てるかなーと真似たら、つい」
「あ、さ……さん、の……ばか……!!(溢れる涙をごしごしと擦りながら)」
「ごめんなキク。ほらそんなに擦ったら跡がつくぞ。ハンカチ貸してやるか……あ(自分が身につけてる服を見て)」
「(ごしごしと乱暴に涙を拭き続け)……あーさー、さん……?」
「……(服の裾を持って)ぴらぴら、ひらひら」
「……?(頷いている)」
「…フランソワ、鏡貸してくれないか?」
「はいどうぞ(手鏡を渡す)」
「……びっくりするほどフリル(真顔)」
「昔の、貴方の趣味とは真逆ですね……(泣き腫らした目で見つめながら)」
「そうなの?」
「もう少し動きやすそうな格好をしていた記憶があります(ごしごしと目を擦ると何度か瞬きをして)」
「…ダメだ、今更ながらに恥ずかしさが込み上げてきた(顔覆い)」
「ええ、でも前に貴方『こんな高貴な服を着こなせるのが俺だぜ?』って得意げだったじゃない」
「あの餓鬼が着ていると思うと殺意しか湧きませんでしたが……貴方が着ていると考えると可愛らしいですよ(赤い目元を緩め)」
「……(その場にしゃがみこみ)キエタイ」
「……お望みとあれば、私もご一緒致しましょう(取り落とした刀を拾い上げ)」
「うん。ちょっとキクちゃんはちょっと黙ってくれる?あとその刀から手を離して」
「……?ですが我が神が願っているのですよ?(然も当たり前の表情で)」
「言葉の綾!本気で受け取らないの!!……はあ。ねえアーサー。良かったら今度貴方に新しい服でも見繕うけど」
「……ほんとか?(顔を上げて)それはありがたいが……」
「ああでもどんなのがいいかしら?やっぱりフリル?」
「フリルはなしだ!!!」
「どんな服を着ていても、アーサーさんが美しいことには変わりないのですが……(凄く真面目な表情で)」
「いや、どんな服をってこともないと思う(上目遣いでキクを見つめる)」
「……(上目遣いを直視出来ず視線を逸らし)では、私も見繕いますので……」
「ちょっと待ってね、確かここに……(カウンター付近を探し)あった!今からデザイン書き起すから待っててね!」
「え、フランソワが作るのか!?」
「ドヤァ(`・ω・)b」
「……レディ。貴女、意外と多芸ですね」
「ギルドマスターをしていれば嫌でも芸はつくんだから。…あ、キクちゃんはどんな感じがいいと思う?」
「そうですね……ふむ(顎に指を当て)……清楚で清らかなものを」
「じゃあこんな感じ?(さらさらとスケブにデザインを書き込み)」
「ああ、とてもいい。……この部分はもう少しゆったりしていてもよいのでは?」
「そうね、風に靡くと素敵ですもの。ああ、帽子とかもかどうかなあ」
「(アーサーが着た姿を想像し)……よいですね。ここにアクセントを持ってきては如何ですか?」
「アクセントかあ……。帽子に何かつけてみる?」
「……(ぽつーん)」
「……アーサーさん?貴方も意見があれば出してください(微笑みながら)」
「俺はふりふわ以外なら別になんでも……」
「……そうですか。では帽子に……(アーサーをじっと見つめ)ああ、首元のブローチを改造して帽子に付けてはどうでしょう?」
「!それだわキクちゃん!流石ね!!伊達にお洒落な羽織羽織ってないわね!」
「ふふ、恐悦至極。この羽織も中々にいい値段ですから(くすりと笑いながら)」

「あ、ねえアーサー」
「な、なんだ?(付近に居たモブ冒険者に話しかけられていたが2人の方へ向いて)」
「あらー、モテモテだねアーサー」
「……(アーサーに話しかけていたモブを射殺す勢いで睨み倒す)」
「キクちゃん、どうどう。……んとね、ベルトの飾りだけど何かデザインのモチーフね、希望があったら入れるけど」
「モチーフ……じゃあフランソワ(フランソワにひそひそ話で伝える)」
「……はいはい。菊のモチーフね(くすくすと笑って)」
「……え?」
「おい!ばらさないでくれ!!(かああっと顔が真っ赤になり)」
「アーサー、さん……(歓喜で瞳に涙を浮かべ)」
「……ひいただろ(顔を赤らめてジト目でキクを見つめ)」
「(首を振り)いいえ、いいえ……ああ、こんなにも幸せな気分になれるのです……ああ、嬉しさで死んでしまいそうだ……(溜まっていた涙が一筋流れる)」
「キクは相変わらず泣き虫だなあ(よしよしと頭をなでて)」
「涙なんて、枯れたと思っていたのですが……(無意識に溢れる涙を拭うことを忘れ)」
「ほらほら、キク。こんなに涙流して……(ハンカチで涙を拭き)ほら、鼻も」
「ああ……お手を煩わせてしまって……ありがとうございます……でも、大丈夫です(へたくそな笑顔で)」
「よーしできた!(がたりと立ち上がり)」
「早い!?」
「……おや、レディ。仕事が早い(泣き顔を誤魔化すように)」
「ふふー。せっかくだからデザインこんなに考えてみたよ(ずらりとデザイン画が並ぶ)……今夜はこれの中から選定して作ってあげるからね」
「……壮観ですね」
「いや適当に決めてもらっても……」
「アーサーさん、自分で決めてくださいな。貴方が着るのですから」
「え、ええ?」
「キクちゃんも勿論選定してくれるよね?」
「私が選んでしまっては、アーサーさんをまた着せ替え人形のようにしてしまう。ですから私は見守るだけですよ(苦笑を浮かべ)」
「じゃあキクちゃん立会のもので選びましょ!……ふふ、今夜は寝かさないんだからっ」
「…俺、このギルドでうまくやっていけるかな(遠い目)」

「夜は嫌いだと言っているのに……ふふ。でももう、嫌いだと泣かなくてもいいのですね(小さな声で)」

*
第1章 3話「ライナスの夜更かし」 完

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