「僕と来てください」
その日は突然訪れた。
いや、突然というのは語弊があるかもしれない。自分の知らぬところで何かが起きているとは気付いていたのだから、きっとこれは起こるべくして起こったのだろう。
こちらをまっすぐに見据える深緑の瞳は、初めて見る色を灯していた。
導師が失踪した。
アクゼリュスが崩落した。
教団及び騎士団が一部壊滅。
自室に閉じ籠っている自分にすら伝わるほどに教団、そして騎士団内部は揺れていた。数十年後には激動の時代、なんて言われているかもしれない。
これから何が起きるのか、何を起こそうとしているのか。モースやヴァンに問いかけた所で欲しい答えが返ってくるわけでもなく、ただ無為な日々を過ごしていた、そんなある日のことだった。
「導師イオン、これは一体…?」
「申し訳ありませんフィオ、事情は追って説明します。どうか僕と来てくださいませんか」
「ですが、」
「えぇええ!?フィオーレ様!?イオン様、どういうことですかぁ!?ってゆうか説得してる時間なんてないですよぅ!!」
「フィオ、お願いします」
懇願するようにこちらを見つめるイオンに心中で深く溜め息を吐く。あまりに突然すぎると思わず目を背けた私を誰が責められようか。
イオン、そのお供の導師守護役。そしてキムラスカの王女。覚えのある顔触れは三人だが、マルクトの軍服に神託の盾騎士団の制服。軍属ではなさそうだが仕立ての良い服を身に付けた少年と青年という、何とも不可思議な面々。どうやら自分は穏やかとは言えない事柄に巻き込まれようとしているのだということだけは嫌でも察知できた。なんと面倒なことか。
だが、しかし──
「それは…この世界に起きている異変や、教団の今の状態を包み隠さず教えて頂ける、ということでしょうか」
「はい」
先程と変わらない眼差しのイオンの目を今度は真っ直ぐ見つめ返した。
「承知しました。すぐに用意します」
数名が瞠目するのを尻目に、宣言通り、彼等が平静を取り戻す前に出立の準備を整えた。
「お待たせしました。さぁ、参りましょう」
いい加減、置いてけぼりにもうんざりなの。