「こちらです」
「こちらって…行き止まりですよ〜イオン様?」
「えぇ。隠し扉になっているんです」
「隠し扉!ロマンがあるなぁ!」
隠し扉という単語に喉奥がつまるような感覚がした。ガイの嬉しそうな声を振り払い、導師の部屋の側に導師守護役の知らない隠し扉、ひいては部屋なり通路があることに眉をひそめた。
「隠し扉、ですか。アニスちゃん初めて聞きました」
「すみませんアニス…。教団の重要機密でしたので」
「イオン様の会いたい人はこの隠し扉の先にいらっしゃるということですね?いや〜随分な人物のようですねぇ」
「えぇ。この先は恐らく護衛が控えています。ティア、姿が見えたら譜歌で眠らせていただけますか?」
「わかりました」
隠し扉
教団の重要機密
護衛
護衛がついてるということは騎士団側の人間ではない。恐らく教団側の人間だ。モースに会いに行くとは考えられないから、大詠士ってことはないか。つまり詠士職?
思案を重ねているうちに気付けば件の人物が待ち構える扉の前だった。もう会えるわけだし考えるだけ無駄か。
ノック二回の後すぐに聞こえたどうぞの声。紛れもなく女性のものだった。それもまだ10代であろう女の子の声だ。
イオン様、ルーク、ガイの壁をすり抜け視界に飛び込んできたその人は予想だにしない人物だった。
「えぇええ!?フィオーレ様!?イオン様、どういうことですかぁ!?ってゆうか説得してる時間なんてないですよぅ!!」
まずい。非常にまずい。まさか歌姫様がでてくるなんて。ティアも隣で固まっている。
歌姫はモースの盲信するものの一つだ。成り行き上とはいえ、導師だけでなく歌姫まで連れ出したのがバレたらどれだけ責められるか。頼むから追い返してと願うもまさかの即応で頭をかかえるしかなかった。
「自己紹介は逃げ切った後でよろしいですか?」
「えぇ、もちろん。これからどちらへ?」
「第四石碑の辺りまで逃げる予定ですわ」
「よし、行くぞ!」
あっけにとられている間にも話は進み、気付いたときにはイオン様とフィオーレ様を囲う陣形で走り出していた。
もうどうにでもなれ!!