自己紹介は三行でまとめろ


辺りが明るくなり始めた頃に目を覚ます。まだ布団に篭っていたくて、覗き出てきた太陽の光に透けた障子をぼうっと見つめる。布団の中にこもった体温が心地好くて、このままでいたいなあと思うこと、数十分。鳥の羽ばたきが聞こえた頃、そっと布団を抜け出した。自室に戻り、隊服に袖を通す。改造に改造を重ねたコートは重いのでまだ置いておいて、顔を洗いに行く。ここら辺でそろそろ目が冴えてくる。
やっと一日が始まるのだ。

今日は確か、例の連続テロ事件の犯人を捕まえるため、張り込む予定だったはずだ。監察方のみんなが頑張ってくれたのを引き継いで、今日からいつでも現場から指示を出せるように土方くんたちが入る。犬威?戌亥?星の大使館だったと思う。犬なのは確かだ。呼んでる分には合ってるし大体良いよね、と納得したところで、土方くんの部屋に着く。

「土方くん、入るよお。」
「おう。」

いつもこの時間になれば、土方くんは既に起きて用意を終えている。隊服のベストを着て、寝癖もそのままに朝の一服をきめている。そろそろ消臭剤を買い替えないといけないな。起きてそのままの布団を片しながら、話しかける。あ、これ今日干そう。今日は良い天気なはずだから。

「おはよう、土方くん。今日から犬威星の大使館前で張り込みの予定だったよね、準備は大丈夫?」
「はよ。ああ、そろそろ総悟も起こしてきてくれ。絶対起きてねェから。」

はあい、と返事しながら、シーツと布団を分ける。シーツを丸めて部屋を出るついでに、寝癖がついていることを教えてあげる。土方くんはそういうのはちゃんとしたいらしい、パパも気にするタイプだ。土方くんの部屋から洗濯機の置いてある部屋の途中に沖田くんの部屋はある。ちょうど寝起きの沖田くんと出くわした。お兄ちゃん土方くんの予想は外れたらしい。

「おはよう、沖田くん。今日は張り込み頑張ってねえ。」
「はよごぜーやす、だるいったらねェや。今日も今日とて雑用係おつかれさまでさ。」
「早く用意しないと朝ごはん食べ損なっちゃうよ。」

それでも重そうに歩いていく沖田くん。寝起きは良いのになあ。見廻りの途中で団子でもお土産にあげようかな、と少し思ったが、土方くんに甘やかすな、と怒られたことを思い出した。一番甘いのは土方くんなのにな、自覚はないみたい。
ドラム式洗濯機にシーツを放り込む。念入りにセットして、スイッチを押した。沖田くんを起こすミッションは達成したし、土方くんを誘って食堂に行こう。お腹が空いたな。屯所中に美味しそうな匂いが広がっている。少しルンルンで、土方くんの部屋に向かった。
すぱん、と障子を開け放つ。タバコの火を消す土方くんがこちらを向いた。もう2本吸ったんだ。

「土方くん、朝ごはん食べに行こう。沖田くんもそろそろ来ると思うよ、ちゃんと自分で起きてたし。」
「…ああ、行く。」

最初はいきなり開けるな、と窘められていたが、最近ではもう土方くんも動じなくなっている。すっと立ち上がって部屋を出る土方くん。寝癖もなくなっている、副長モードだ。いや、副長じゃないモードとかはないけど。
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