確定消すな
我妻善逸
縋り付くように私を見る不安げな瞳は
酷く私を恐れていた。手を伸ばしてまだ
乾ききっていない涙の筋が残る善逸の頬
に触れれば、その証拠と言わんばかりに
肩を大袈裟に震わせる。できるだけ優し
い手つきで頬を撫で、親指の腹で唇をな
ぞるように撫で、そのままうっすらと開
いた口の中に親指を差し入れると息を詰
まらせ、善逸が苦しげな声を上げた。無
意識に逃げる舌を追いかけ、歯並びをな
ぞり、頬を内側から触り続ければ、再び
溢れた涙と共に閉じる事ができない善逸
の口から唾液が滴り落ちる。
「……ねえ、いいのよ、善逸」
指を噛んだり、体を突き飛ばしたりし
て、いくらでも私を拒めば良い。羽織り
の裾をきつく掴んで、全身を緊張と恐怖
に強ばらせて、そうまでして私の悪戯を
受け入れなくて良い。けれど善逸はゆる
ゆると首を左右に振り、涙と唾液に濡れ
た顔で開いた口から情けない声を漏らし
ながらも一度として私を拒まなかった。
その事実がたまらなく私の加虐心と支
配欲を刺激しているという事を、善逸は
知らないのだろう。ここでもし善逸が私
を拒んでくれれば、私は素直に止める事
ができたのに。ここでもし善逸が嫌だと
はっきり口にしてくれれば、私もごめん
ねと口にする事ができたのに。
「そうね、善逸は、いつも、そう……」
胸の奥から湧き上がる苛立ちに耐えき
れず力を込めて親指の爪で善逸の頬肉を
内側から千切るように引っ掻けば、悲鳴
と唾液混じりの血が手にかかった。△/ TOP /▽