確定消すな
鶴丸国永
あろうことか火を着けたばかりの煙草
を横から掠め取り、あっと声を出すより
も先に掌で握り潰してみせたのは私が煙
草を嗜むことをなによりも嫌悪し、やめ
させようと躍起になっている鶴丸国永だ
った。刀剣男士であろうと人の体を成し
ている以上痛覚はあるのだ、さぞ熱かっ
ただろうに顔色ひとつ変えず、怒りのこ
もった目でじっと睨まれては然しもの私
も二本目に火を着ける気にはなれない。
「わかったよ、やめるやめる」
「そう言ってやめてないだろう、君」
「はいはい、ごめんなさいね〜」
私の態度が気に入らないのか、整った
顔が苛立ち気に歪む。かと言ってこちら
も吸いかけどころか一度も吸えていない
状態の煙草を目の前で潰されて苛立たず
にはいられない。互いに睨み合い次に口
を開いたのは鶴丸だった。
「どうしてそんなものを吸うんだ」
「鶴丸には絶対にわからんさ」
「自分の寿命を自分から縮めるなんて」
「それでも吸う価値はあるんだよ」
「俺は!」
適当にあしらうような態度に業を煮や
したのか、急に語気を強めた鶴丸の声に
煙草をしまおうとした手を止める。
「俺は……君と長く共に在りたい」
だからそんな有毒なもので限りある大
切な時間を削ってほしくないのだと、そ
う言う鶴丸の鼈甲飴のような瞳にはいつ
の間にか涙の膜が揺らめいていた。困っ
たものだ、この刀剣男士はなにを勘違い
しているのだろうか。私はその限りある
大切な時間を、審神者などという職に、
政府に尽くすためだけに終わらせたくな
いのだと、肺炎になって審神者辞められ
れば御の字なのだが、それが叶わないの
ならいっそのこと肺癌にでもなって早く
人生を終らせられればと、そう思ってい
るのだが。このことを今のこいつに言っ
たらどうなるだろうか……そう考えて、
面倒なことになるのが目に見えていたか
らやめた。
「……あっそ、」△/ TOP /▽