{emj_ip_0847}初めに{emj_ip_0847}
この話は、worksにある、手にしたのは片道切符のちょっと先の話です。すいません、本編全く進んでおらず…
なんか訳もわからず話が進むと思いますが、それでもよろしいかたは、この下へお進みください。





























「にしても、あんた達イブにこんなとこ来るなんて、悲しくないの?」

サイドテーブルにチキンとポテトを置いて、名前は呆れたように目の前の三人組を見た。

当の御三方いや、三馬鹿は楽しそうにビリヤードで遊んでいるが、大して上手くはない。偶に格好つけて背面で打っているが、様にもなってない。

曲がりなりにも客であり、名前の言葉はお客様に対する態度ではないのだが、三馬鹿は気にした様子もなくへらへらと笑っている。

「だって姐さん、俺イブのクソ寒ぃ中ナンパ行って振られたりしたら、寒ぃなか切ない思いするだけっすよ?それならあったけー店で、曲がりなりにも女の姐さんに接客してもらいつつ、旨い飯で楽しく玉突きした方が、よっぽど有効なイブっすよ」

茶髪メガネがそんなことを言い、そーだそーだとヒゲ男と金髪が囃し立てている。
まあどうみても冴えない不良なこの三馬鹿と快斗はなんで接点があんのかねぇ、と名前はいつも不思議に思うのだが。客として店に連れてきた時には驚いたが。そのまま常連となった今ではなんやかんやで仲良いんだな、と納得している。

「そういや姐さん、今日は黒羽は店に出てないんすか?」
「快斗は今日用事があるみたいよ。まあ、イブにビリヤードバーに昼間っから来る暇なやつは、あんた達くらいってこと」
「ちぇ!あいつ女か!」
「あの可愛い幼馴染と一緒なんじゃねーの!姐さんというものがありながら!リア充めが!」
「姐さん!あんな奴やめて俺にしとけ!」
「いやいや、やめるも何も快斗とは何もないからね」
「シラフじゃやってらんねー!姐さん!酒出して酒!」
「未成年に酒は出さないってば。コーラでも飲んどきな」

ちぇー!!くそー!!コーラで酔っ払ってやるー!!そう騒ぎたてる三馬鹿を前に、名前は馬鹿だねと苦笑しつつ。カラン、とお客様の来た音がしたのでそちらに向かった。







「あー。つっかれた。意外とお客さん来たわねー」

イブのデート先がビリヤードバーってありなのかは知らないけど、初見さんも見えて、まあまあの売上だった。寺井さんに明日はクリスマス向けのメニューでも作りますかって聞いておこう。シャンパンも買っといた方がいいかな。いつものメニューしかないと味気ないよね。明日も休日だし、この様子じゃまたちょっとは来そうだ。カッコつけたい男がビリヤードでも披露したいもんなのかしら。

そんな事を思いつつ、店の裏口から階段を登り、部屋に戻る。名前がかちゃりとドアを開けると、月明かりに照らされた白装束が見えた。

「あれ、デートだったんじゃなかった?」

名前の言葉に、目の前の男は不機嫌そうな顔をして。

「俺、言ったよな?昼は今日の現場の下見だって。仕事っつって断った人に言われたくねーっつーか!」
「サービス業界でこの時期に休みとる奴はモグリじゃない」
「今日くらい寺井ちゃんに任せりゃ良かったんじゃねーの?」
「イブだからって私目当てで来てくれる人もいるしね」
「はぁ!?」
「いや、三馬鹿とか」
「…あいつら」

はあ、とシルクハットを脱ぎ捨てて、キッドは手を差し伸べた。

「まあ、そこら辺のところはまたおいおい聞くとして。お手をどうぞ?レディ」
「は?」
「あ、もうちょい暖かな格好の方がいいな」
「え?」

言う間に、ぱちり、と音がしたかと思えば、首元にはマフラーと、手には手袋が。白色の柔らかな手触りのそれは、見覚えがないもので。

「さ、行くか」
「だから、どこに…」

聞く間もなく、一瞬で快斗に戻ったキッドに引き摺られ、コートを着せられバイクに乗せられた。
もう疲れたから眠りたかったんですが。なんでこーなった。


「ーーさっむ!」
「暖めてやろーか?」

わきわきと両手を差し出す快斗に、結構です、とお断りして。ちぇーっと拗ねつつも、ほら、と暖かな缶コーヒーを差し出す快斗に、名前は礼を言いつつ、プルタブを開けた。暖かさが染み入るわー。

人気もない、どこぞの山頂のような場所。少し手入れがされているのか、開けた一部の部分にベンチが1つ。そこに名前は座っていた。

「で、ここどこ」
「まあまあ。ほら、上見てみ?」

なんなの、と見上げた空は、一面の星空で。澄んだ空気だからか、チリのような星まで見渡せる。星屑、という言葉がなんともぴったりな、空。


「ーー綺麗、」
「だろ?」

メリークリスマス!!その顔が見たかったんだ、と快斗は笑った。

「せっかくだしケーキも食おうぜ!」
「え、持って来たの?寒い中食べるの?」
「おう。一面の星空の下でケーキ食うって、ロマンチックだろ?」

ほら、カンパーイ、とシャンパンを渡され。

そういや、ここ最近、クリスマスは基本仕事だから。こんな風にだれかと過ごしたことなかったな。と。

なんだか楽しくなってきて、名前も笑ってシャンパンを掲げた。





「てか、このマフラーと手袋、どこで買ったの?」

どうやら部屋で着けさせられたマフラーと手袋はクリスマスプレゼントだったらしい。
すごく手触りが良くて、網目も凝っていて可愛いので、正直気に入った。せっかくなのでお店教えてもらおうと、ケーキを頬張りながら名前は軽い気持ちで尋ねた。

「ん、それ、俺の手編み。カシミアだかんね、いい手触りっしょ?」

「ーーまじか」


このクオリティが、ヤローの手編み…。

さすが怪盗キッドだわ。


「名前からのプレゼントは?」
「いきなり連れ出して持ってきてるわけないでしょーが」
「ないならちゅーでいいよ?」

そう、自らの口に指を添える仕草が無駄に可愛いのが腹がたつ。

「ばーか」

ぺしりとその頭を叩いて。
ちぇーとなっている快斗の寒さで赤くなっている頬に唇を寄せた。

「…メリークリスマス」
「え、へ!?」

あ、快斗、頬がさらに赤くなってら。


「ちょ、名前!もう一回!」
「ここから先は別料金です」
「はあ!?」


あーケーキ美味しい。

自分の頬も火照っているのに気づかないふりをして、名前は笑った。





Happy Merry Christmas!!





































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