落日に、ならんだふたり


地球 ―エドモントン。
市街地でモビルスーツ同士の戦いがあったことが嘘のように活気づく街中を私と三日月は歩いていた。
瓦礫に埋もれた建物の復旧が続く中、鉄華団として役に立てることはないかと思い下見に来ている。

「ミカ、調子は悪くない? 大丈夫?」
「大丈夫、別に問題ないよ」

少し蔭を帯びた三日月の右目は確かに私を見ていた。自身の体に残った障害についてたいして気にもとめていないようだった。三日月のおかげで、私は、鉄華団のみんなは生きている。今、こうして隣で笑っていることがとても幸せなくらい。

三日月のバルバトスと、ギャラルホルンの真っ黒なモビルスーツとの戦いを目の当たりにした私は、あの異常な戦いが人間の体では耐えられるものではないことを悟った。
阿頼耶識システムのフィードバックを以てしても、まるで悪魔のような巨大な機体がバルバトスを嬲っているようだった。もうやめて、と何度も心の中で思ったけれど、それを口に出せるほど私はまともではなかった。その言葉を口に出したら三日月が戻ってこないような気がして、ただひたすら戦いの様子を見届けることしかできなかった。勝利とひきかえに、三日月は右目のほとんどの視力と、右腕の感覚を失った。それでも、オルガが言ったように、鉄華団はちゃんと生き残った。

「あ、そろそろ夕焼けが見えるんじゃない」
「もうそんな時間? そろそろ戻らないと」
「そうだね、帰ろうか」
「セシル」

ほら、と差し出された左手。私よりもずっと大きくて、骨張ったその手はバルバトスと一緒に私達の命を守ってきてくれた。そんな彼の手のひらに触れるなんて、できない。

「俺が戦ってた時、ずっと心配してくれてただろ」
「・・・・・・気付いてたの?」
「まあ、あれだけ殺気が出てればすぐに分かるよ」
「ギャラルホルンのパイロットを殺してやりたいくらいだった」
「はは、セシルらしい。ほら、はやく」

早く帰らないとオルガに怒られるだろ、そう口に出しはしなかったけれど彼の左目が訴える。
恐る恐る三日月の手を握り返す。誰かの血で汚れ続けてきた彼の手は、とても温かい。

沈みかける太陽から差し込む夕日が私達を照らす。
繋がったふたつの影を見て、ようやく私はこの地球の地で生き残ったことを実感した。




2016/7/25




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