もっといっしょにいたい


静止軌道基地アーレスでの会合の後、モンターク商会との橋渡しのため、鉄華団からもひとり連絡人を常駐させることになった。

オルガの一声でそれは私に決まり、あっという間に私は火星の鉄華団から地球のモンターク商会、もとい、ギャラルホルン地球外縁軌道統制統合艦隊のマクギリス・ファリドのお膝元で秘書として働くことになった。モンターク商会にはトドがいるから必要がないと、半ば無理矢理に地球外縁軌道統制統合艦隊に連れてこられた私は、初めて降り立った地球の豊かさに驚くばかりだった。マクギリス・ファリドは本来なら出向してきている立場の私をほとんど客人のように扱い、いくら共闘の立場を取っている相手だからと言えど、これではまるでどこかのご令嬢のよう。そんな私の身の丈に合わない境遇は、とても居心地が悪かった。

「私は、頑張っている君が好きだよ」

書類の整理を手伝っていて、ふとかけられた何気ない一言が、私の中に波紋を起こした。初めて来る場所で、ヒューマン・デブリではなくまともな人間として扱われ、対等な会話をされて。初めて女性らしい扱いをされて。少し、浮かれて気が緩んでいたのかもしれない。彼にとってはきっと何気ない、仕事に対する評価の言葉だったはず。何故かその言葉が嬉しくて、気が付くと彼を視線で追いかけるようになってしまった。この柔和な笑顔で、どれだけの人間の心を掴んで、取り込んできたのだろう。どれだけの女性が虜になったのだろう。そんな、考えても仕方ないことばかりが頭を巡る日々に自分も呆れていたのに。彼の言葉が、私の心を決めてしまった。

「セシル。君の力を、私に貸してくれないか?」

差し伸ばされた手を掴んだのは、過ちだったのかもしれない。オルガの意向とは別に、私の独断で彼に力を貸す。それがどういうことになるかなんて、分かっていた。それでも私は、彼から離れることが出来ない気がする。この気持ちは、偽れない。


もっといっしょにいたい - マクギリス・ファリド

2017.01.06〜2018.05.20




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