目をそらしたりしないで


「泣いてるの」

隠れてこっそり泣いているセシルにひどくいらつく。その理由が分からなくて、むかむかと消化不良の様な気分が沸き起こってきて、つい口から出た言葉は自分が思っていたよりも強い口調になった。

「……泣いて、ない」

セシルはこっちを見ない。頬を伝う涙を隠そうともしない。

「ふうん」
「これは私の涙じゃない、死んだ子達の涙だから」

地球支部が経済圏同士の戦争に巻き込まれた。セシルはチャドと一緒に大怪我を負ってついこの間まで入院していた。きっとセシルは、責任を感じている。もし自分が怪我をしなかったら、前線に立っていられたら、自分も戦えていたら。そんなもし、を考えている。そんなもし、は今更有り得ないし、どんなに後悔したって死んだ奴等は帰って来ない。今、生きているセシルが死んだ奴等に引っ張られて、どうするの。

「死んだ奴等には死んだ後に、会えるだろ」
「それは、分かってる……でも」

自分の無力さが嫌になっただけ。そう泣きながらセシルはふわりと笑った。どう見ても無理矢理に笑った顔なのにどこか綺麗で、でも、すぐに消えてしまいそうで。違う、これは本当のセシルが笑った顔じゃない。そう思ったら、いつの間にかセシルの首を掴んでいた。真綿を締めるように優しくゆっくりと締めつける。初めて触れたセシルの身体がこんなに華奢だったなんて、正直驚いた。俺の片手ひとつで、セシルは呼吸すらままらなくなる。

「み、三日月!?」
「作り笑いはいらないよ」

息苦しさから少しだけ歪んだセシルの顔はどこか、綺麗だった。だけど、これじゃない。首を掴んだ理由はただ、セシルの泣き顔を見たくなかった。それだけだったのかもしれない。俺が見たいのは、その顔じゃない。いつもみたいに、太陽みたいな笑い顔を見せて。
そのためだったら、俺は何だって……するよ。


目をそらしたりしないで - 三日月・オーガス

2017.01.06〜2018.05.20




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