お前に人生くれてもいい(ジャック・アトラス)
街中で偶然、恋人―セシルの姿を見かけた。
非番だろう彼女は両手に沢山の紙袋を抱えたまま、真剣にショーウインドウの中のきらびやかなウェディングドレスを見つめていた。
俺とて結婚を考えた事が無い訳では無いが、いざ彼女の淡い憧れを目にすると何か追い立てられるものを感じる。
ふとショーウインドウ越しにセシルの瞳が俺を捉えた事に気付く。
見られたくないところを見られたという焦りからか、しばらく固まっていたが。
再び目が合った今なら、俺の言葉を理解できよう?
まだ音に乗せて言ってなどやらんがな。
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