遙の家のドアの前の景色によく似ているが、それがhigh speedに流れていく。
初めて見るその光景にしばし見とれて言葉を失っていると、遙が忍び笑いを漏らす気配がした。
「良かった。高速苦手なんだけど、政宗が気に入ってくれるなら」
「苦手?」
「うん。目が疲れるから」
「I see. 俺が代わってやれればいいのにな。最高にcoolだ。馬より断然早ぇ。……遙が俺の世界に来たら、馬に乗せてやれるのにな。風を切って走るのは気持ちいいぜ?」
遙はくすりと笑った。
「気持ちいいだろうね。私も乗馬始めようかな。一応この世界でも馬に乗れるんだよ。少しでも政宗の視点を共有したいな。でも、政宗の世界と違って自然が少ないから…。政宗の世界に行けたらいいのにね…」
はぁっと溜め息を吐いて、遙はハンドルを握り直した。
「哀しい事は今は考えたくないな。政宗とこうして一緒にいられる事が幸せだから。まだ信じられないくらい。ずっとフラれるとばかり思っていたから……」
「I told you. お前をフる男が見てみたいって」
そう言うと、遙は苦笑いをした。
「私、前の彼氏にフラれたよ?会ってみたい?」
「会えるものならな。そいつに会ったら、遙を捨てた事を嘲笑って、俺達の仲を自慢してやる。But……もったいないからお前の笑顔は見せたくねぇな。俺の前で笑うみてぇに他の男の前で笑うなよ?」
昨日の晩、遙を抱いてから、遙が見せてきた甘い表情が胸に蘇る。
絶対にあんな表情を他の男になんか見せたくねぇ。
遙は俺のものだと、世界中の男に知らしめたい。
右側に座る遙の横顔で陰になっていて、遙の右耳に開けたピアスも、俺が戯れに付けたhickyも見えない。
運転中は危ないからと言って、触れる事も許されずに焦れる。
俺は思わず溜め息を吐いた。
遙がミラー越しにちらりと俺を見る。
「政宗、どうしたの?疲れた?」
「これくらいじゃ疲れねぇよ。お前に触れられないからつまらねぇ」
遙は目を見開き、その途端急に車のスピードが上がった。
「もう、政宗、ドキドキさせないでって言ったでしょう?思わずアクセル踏んじゃったよ。もう政宗とは車に乗らない!危ないもん」
「Ha!俺もお前に触れられないし、口説けなくて退屈だから、構わないぜ?焦るお前も可愛いけどな。早く着かねぇかな」
遙はやれやれというように溜め息を吐いた。
「あと10分もしないうちに着くよ。だから、お願い。もう少し我慢して」
俺はまた外の景色を眺め始めた。
車内の音楽はまた一周して、Born to be my babyがかかっている。
遙の言う通り。
今だけは哀しい歌は聞きたくない。
別れの事は考えたくない。
遙が俺の『運命』かどうかなんて分からないけど。
それでも、俺はこれが運命だと信じたかった。
これほどまでに心を奪われたのはお前だけだったから…。
遙が付き合うであろう男達の中の一人ではなく。
I wanted to be your someone special….
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