世界で一番熱い夏 -7-

夕暮れになって、私達は美紀と別れて家路についた。
帰りに写真屋に寄って、写真を現像する。
デジカメのデータを読み出してサムネイルが表示された。
美紀に言われたままに政宗とラブラブしていた写真のサムネイルを見て恥ずかしくなる。

うわぁ……。
恋する乙女だ……。

BASARAで上杉主従のエンディングを見て爆笑していたけれども、これじゃ人のこと笑えない。
政宗と見つめ合っている写真は正しく二人の世界で、他のことが全く目に入っていない。

「へぇ、結構たくさん撮ったんだな」
「全部とりあえず1枚ずつ現像でいい?何だか恥ずかしいけど」
「そうか?可愛く撮れてると思うぜ。全部現像して後でゆっくり眺めようぜ」

政宗は目を細めて嬉しそうに笑って私の手をぎゅっと握った。
全部1枚ずつ現像すると、私達は夕食の食材を買って家に帰った。


家に帰ると、私は写真を政宗に手渡して、元彼の写真を処分するために書斎に入った。
本棚に立てられているアルバム2冊丸々元彼と撮ったものだった。
一緒に観光に行った写真もあるので、人物が写っている写真だけを抜いて床に無造作に落としていく。

全部シュレッダーにかけようかな……。

ガチャリとドアが開く音がして、そちらに目をやると、政宗が写真を手にして部屋に入ろうとしていた。

「来ない方がいいと思うよ」

散らばった写真を掻き集めるようにすると、政宗がすぐ傍に座り込んで写真を一枚拾いあげる。
奪い返そうとすると、政宗はするりと避け、持って来た写真と見比べている。

またきっと政宗が辛くなるから…。

再び写真を奪い返そうとすると政宗が呟いた。

「なるほどな。あいつ、生意気だが、見る目は確かだ」
「え…?」

政宗が生意気だというのは美紀くらいしか思い付かないけど…。
一体何を言われたんだろう…?

私の問いには答えず、政宗は有無を言わせない声音で告げる。

「他の写真も全部見せろ」
「見ない方がいいよ。キスしてる写真はないけど、抱き合ってるのとかあるよ?」
「いいから、隠さずに全部、だ」

じっと威圧的な視線で言われて、私は仕方なくまた写真を床に捨てていく作業に没頭した。

ちらりと政宗を見遣ると、一枚一枚写真を一瞥して脇に避けて行く。
政宗が一体何を考えているのか分からなかったけれど、今朝のように悔しげな表情は浮かんでいない。

全ての写真を見終わると、政宗はフッと笑いながら私に写真を差し出した。

「遙は俺よりも前の男と幸せだったんじゃないかって勘ぐってた。でも、この写真……いいだろ?」

政宗と額をつけて笑っている写真だった。
美紀ってばこんな写真まで撮ってたんだ……。

「これだけじゃねぇ。他の写真も…。お前が幸せそうで。もしかしたら前の男ともって思ったが、そんな写真一枚もなかった」

政宗はホッとしたように嬉しそうに笑う。

「お前には笑っていて欲しい。でも…この笑顔だけは誰にも見せたくなかったぜ」

眩しそうにその写真を見る政宗の表情は切なそうだった。

「こんなに無防備に幸せそうに笑いやがって。他の男の前でこんな風に笑ったら絶対に許せねぇ」

政宗はそんなシーンを思い浮かべているのか、苦り切ったような悔しげな表情を浮かべている。

「それはお互い様だよ。政宗の笑顔も幸せそうで無防備だもの。こんな笑顔見せられたら皆恋に落ちちゃう。美紀の事は信用してるけど、でも何だか悔しいな。誰にも見せたくない」

私が苦笑いしながら言うと政宗はふわりと微笑んだ。

「お前がいねぇと俺はこんな風に笑えねぇよ。だから心配すんな。写真って便利だな。お前の笑顔を風景の中から切り取っておければってずっと思ってた。これ、もらっていいか?」

政宗は愛しげに写真を見つめた。

「うん、いいよ。私も後で焼き増しするから。ロケットに入れる写真選ぼうか?」

私は元彼の写真を袋に入れると政宗とリビングに行った。

二人で写真を選んでハサミで切ってロケットの中に入れる。
お互いに撮り合った写真だった。
まるで政宗が私に微笑みかけてくれているような錯覚を覚える。

これがあればいつでも政宗に会える。
例え、離れてしまっても……。

「水に弱いから、前みたいにいきなりお風呂で襲うのとかダメだからね?」

そう釘を刺すと政宗はおかしそうに笑った。

「もうあんなにがっつかねぇよ。……多分」
「多分じゃダメ!」

抗議するように政宗のシャツを引っ張ると、くすくすと笑いながら抱き寄せられる。
ふわりと政宗の温もりに包まれて幸せな気分になる。
政宗の鎖骨の上でロケットが揺れていた。

もし政宗がこのロケットを持って帰れるのならば。
その写真を眺めて私を思い出して欲しい。
二人愛し合った事を。
例え違う誰かを愛しても。


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