背中に政宗の温もりを感じる。
私より20cmほど背の高い政宗の身体は、こうして横たわって後ろから抱き締められると、まるでパズルのピースがぴったりと嵌まるようにしっくりと身体に馴染む。
昨日の夜は、もうこうして政宗に抱き締めてもらえる事など二度とないと思っていたから。
この温もりが尊くて。愛しくて。
政宗の手にそっと手を重ねると、政宗は私をギュッと抱き締めた。
そして、欠伸をかみ殺す気配がする。
私はもぞもぞと寝返りを打った。
「Good morning」
ふわりと笑って低い声で囁くと、政宗はそっと唇を重ねてきた。
初めはそっと触れ合わせるようだった口付けが、次第に熱を帯びていく。
私を抱き寄せ、背中を官能的に手のひらが滑って行き、思わず吐息が漏れた。
政宗は唇を離すと、私をギュッと抱き締めた。
「ダメだ…。お前の肌が気持ち良くて、また抱きたくなっちまう」
今までそうして来たくせに、今更ながらに政宗がそう言うから何だかおかしくて笑ってしまった。
「いいよ、別に。私ももう少し政宗とこうしていたいから」
政宗の首筋に顔を埋めて言うと、政宗がフッと笑う気配がした。
「昨日あれだけ抱いてやったのにまだ足りねぇのか?」
揶揄するような政宗の言葉に頬を染めつつ、私はこくりと頷いた。
「ずっと政宗と一緒にいたい。ずっと政宗の温もりを感じていたい。もっと政宗が欲しい」
政宗は息を呑むと、きつく私を抱き締めた。
「っ……!あんまり可愛い事言うんじゃねぇよ。俺を煽るな。止まらなくなっちまう」
政宗は何かを堪えるようにしばらくきつくきつく私を抱き締めていたが、やがて身体から力を抜いて、深い吐息を吐いた。
「昨日約束したからな。今日は買い物に行くって」
少し身体を離してそっと私の額に口付けると、政宗は身体を起こした。
「お前を抱いてやりてぇのはやまやまだが、日が暮れちまう。出かける支度しようぜ。この世界の服を買うのが楽しみだ」
政宗の口許には嬉しそうな笑みが浮かんでいる。
私も身体を起こした。
「じゃあ、出かけようか」
私達は順番にシャワーを浴びると、遅い目の朝食を摂った。
そして、出かける支度をする。
二人別々に服を選んだのに、初めて二人が出かけた時と同じ服装をしていた。
「何だか懐かしいな」
政宗が少し遠い目で私を見る。
「そうだね…」
あの頃は政宗とこうして結ばれるなんて思っていなかった。
「やっぱり、お前の肌を他の男に見せたくねぇ」
苦り切った政宗に思わず笑みが漏れる。
「だって暑いんだもの」
そう言うと、政宗は不服そうに私を見つめた後、溜め息を吐いた。
政宗の束縛が心地良い。
私が小さめのバッグに荷物を詰めようとすると、政宗に止められた。
「今日はここに戻らないかも知れねぇ。化粧道具と薬は持って行った方がいい。それから、荷物が多くなるから車を出してくれ」
「え?どこに行くの?」
「新宿だ」
新宿、というと、真っ先に脳裏に浮かぶのは歌舞伎町。
いかがわしいイメージでいっぱいだ。
まさか歌舞伎町のいかがわしい店でオールとかラブホテルに宿泊じゃないよね……?
不安げに政宗を見上げると、政宗は少し首を傾げた。
「どうした?」
「えっと……歌舞伎町に行くんじゃないよね?」
「歌舞伎町?芝居小屋があるのか?」
不思議そうな顔をしている政宗に慌てて首を横に振った。
「何でもない。知らないならそれでいいの。新宿のどこに行きたいの?」
「Men's専門のdepartment storeがあるって聞いたから」
ああ、そういえばそうだったと思い出す。
「うん、分かった。じゃあ行こうか」
私が簡単に荷造りを終えると政宗も支度が終わったらしい。
腰につけたシザーバッグには、政宗に貸してある長財布が入っている。
それが何だかものすごく膨らんで見えて、政宗は一体いくらのポケットマネーを手に入れたんだろうと思う。
「ねぇ、政宗。一体いくらのポケットマネーを持っているの?」
政宗はニヤリと笑った。
「秘密だ。今日は黙って俺について来い。悪いようにはしねぇ」
自信たっぷりに笑う政宗に何だかドキドキした。
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