頬をぺちぺちと軽く叩かれる感触に途絶えていた意識が浮上する。
遙より遅く俺が目覚めるのは珍しい。
昨日は何度も遙の文を読み返し、柄にもなく号泣してしまって、温もりを求めるように、熟睡している遙を抱き締めて眠りに落ちたのだった。
目が腫れているかも知れないと思うと気恥ずかしい。
遙は尚も俺の頬をぴたぴたと叩く。
俺は目を閉じたまま遙の手を取り、指先にキスを落とした。
遙は軽く息を飲み、動きが一瞬止まる。
指先をそっと唇で食むと、遙は甘い吐息を漏らし焦れたように子猫のような声を上げる。
「政宗ぇ…」
「何だ?」
「それ、ダメ…」
「何が?」
意味を成さない問答をしながらまた指先をそっと食み、唇を手首に滑らせていくと、堪え切れないように遙は俺にしがみついた。
「分かってるくせに…」
「俺が欲しくなったか?」
耳元で低く囁くと、遙は身体をぴくりと震わせ、耳まで薄っすらと桜色に染めるとこくりと頷いた。
「でも、もう朝だし…」
おずおずと抗議の声を上げる遙を無視して、首筋に軽く歯を立てるように口付けると、遙は小さく嬌声を上げた。
「遙、愛してる。お前を放したくない」
耳朶を食みながら低く囁き、すべらかな肌に手を滑らせていくと、遙はささやかな抵抗を止め、しがみつくように俺の頭を引き寄せ、くしゃりと髪を握る。
柔らかな肌の感触を慈しむように手のひらを滑らせながら、頬に首筋にキスを落とすと、遙は俺を抱き締め、甘えるように軽く呻いた。
掠めるようなキスを遙の唇に落とし、頬を押し包むようにして遙を見つめると、熱に浮かされたような視線とかち合った。
「政宗、好き。愛してる。早く海に行きたいのに、こんな風にされたら拒めないよ」
「拒まなきゃいいだろ。折角夫婦二人水入らずなんだから」
遙の左手を取り、指輪に口付けると、遙は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに微笑んだ。
「仲居さんが来ちゃう」
「放っとけばいいだろ。もう少しお前とこうしていたい」
「政宗が構わないなら私も別にいいけど…」
「じゃあ、しばらくお前はこのまま俺の腕の中にいろ」
「政宗、んっ!」
何かを言いかけた遙の言葉を遮って、深く唇を重ねる。
口付けを交わしながら互いの肌に手のひらを滑らせていくと、昨日あれだけ愛し合ったのに、また情欲の炎が胸に灯る。
遙と恋に落ちるまでは、単にそれは厄介な生理現象で、ただ機械的に女を抱く事で鎮火させていた。
でも、今はこの熱すら愛しい。
俺が遙を愛している証だ。
遙を求めれば求めるほど炎は鮮やかに燃え盛る。
それは熱いというよりむしろ穏やかで温かくて。
俺がこんな気持ちになるなんて思ってもみなかった。
ずっとこの気持ちを抱いていたい。
いや、俺はこの気持ちを決して忘れない。
Because it's an eternal flame….
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