温もりに安堵して、ほっとしているのに、涙が止まらない。
もう、悲しくて泣いているのか、緊張が解けて泣いているのかわからない。
ただ、この温もりを手放したくなかった。
「Honey、あんまり泣くと、あんたのcuteな目が腫れちまうぜ」
耳元で政宗が囁いて、私をそっと引き離し、親指で涙を拭ってくれた。
そっと目を閉じると、すぐに柔らかい唇が瞼に降ってきた。
くすぐったいような、酷く甘い感触に私は酔いしれた。
少しずつ涙が止まっていく。
唇はやがて、頬に落ち、そして、私の唇に重なった時、私はびくりと身体を震わせ、ハッと目を見開いた。
政宗と目が合うと、政宗ははっとしたような表情になり、視線を彷徨わせた後、私の頭をくしゃりと撫で、私を立ち上がらせた。
「遙、どうする?このままgameを続けるか?それとも止めるか?」
私は涙を拭きながら答えた。
「折角政宗と来られたから、最後まで続けるよ。終わったら、映画借りて、食材買って帰ろう?」
「映画?」
「寸劇みたいなものだよ。まあ、見ればわかるよ」
「Okay, 楽しみにしてるぜ」
フッと笑った政宗の笑顔は眩しくて。
またドキドキと胸が高鳴った。
キューを持つ手が震えたけど、政宗がさり気なく肩に触れたり、髪に触れたり、冗談を言ったりするたびに、くすぐったい気持ちと懐かしさが溢れ出し、次第に私の心は解れていった。
まるで、以前からの恋人同士のように、政宗に触れられると甘酸っぱい気持ちで心が満たされていった。
私はすっかり調子を取り戻し、次々と球をポケットに落としていった。
休憩の間、思わず政宗と指を絡めるようにして自ら手を繋いでしまう。
それに応えるように、頬に軽くキスを落とされると、目を細め、口元が綻んでしまう。
この想いは錯覚なのに、ただただ溺れてしまいたかった。
政宗はずっと優しげに、時に悪戯っぽく微笑んでいた。
「そろそろ時間だね。ここを出て、映画借りてから、夕飯の食材買いに行こう」
「ああ、いいぜ」
手を繋ぎ、ゆっくりと街を歩く。
その瞬間が、酷く愛しかった。
そのせいだろうか。
レンタルビデオショップに着いた私は無性に恋愛映画が見たくなった。
アメリカ映画を、そして何より恋愛映画を私はここのところずっと避けていたのに。
DVDを手に取り、政宗に作品概要を説明すると、「別にあんたが見たいものなら何でも構わねぇ」と言って、笑ってくれた。
そのまま幸せな気持ちでほわほわとデパ地下に入ると、隣を歩いていた政宗が声を上げる。
どうやら見たこともない食材がずらりと並んでいることに興味を引かれたようだ。
私の手を引き、あれこれと質問して回る。
隻眼はキラキラと輝き、少年のようで、少し可愛らしかった。
特に、鮮魚が政宗の目を引いたようだった。
確かに仙台は、海からそう遠くないとは言え、浜辺から鮮度を保った状態で青葉城まで送り届けるには限度がある。
氷があるわけでもない。
生きのいい魚が所狭しと並んでいる様子に、政宗は感嘆の溜息を漏らし、私達は1時間ほど悩んだ挙句、生鰹と野菜を買った。
「ここ、すごく楽しいな。また来ようぜ」
「いいよ。毎日でも来てあげる。私も料理するの好きだから」
「Sweet!!」
政宗は満面の笑みを浮かべ、私の手をぎゅっと握り締めた。
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