でも、政宗は驚いたようだった。
確かに、あの時代、人々は着物に身を包んで、特に女性は肌を見せなかったのだから。
それでも、海で遊びたいという気持ちは抑えられなくて。
海で泳ぎたいと言ったら、政宗は驚いたような表情になった後、苦い顔をして駄目だと言った。
私にとっては海で泳ぐなんてあまりにも普通のことだから。
軽く抗議してみたら、『襲われるぞ』と冗談めかして言われた。
今まで友達と海に遊びに行って、男の人に声をかけられることもあった。
そういうのはすごく苦手で。
怖くて。
でも、彼氏とか男友達と一緒の時は大丈夫だった。
本当は政宗と行きたかったけど。
でも、言えなくて……。
私はわざとはぐらかした。
男友達と行っても危ないと政宗は言う。
それなら……。
政宗なら一緒に行ってくれるの……?
私は、思わず、本心を仄めかした。
本当は他でもない政宗と一緒にいたかったのだけれど。
それはまだ言えなくて。
『遙……。俺も男だということを忘れるなよ。いつ襲いかかるかわからねぇぞ』
政宗に抱かれるのであれば……。
例え政宗が他の誰かを愛していても構わなかった。
肌を重ねている瞬間だけは、きっと私を感じてくれているから。
政宗への想いに気付いてしまったから。
私はそれでも構わなかった。
「……私………政宗なら………」
言いかけて踏みとどまる。
ここでもし拒絶されてしまったら……。
はっきりと振られるのなら、せめて政宗の誕生日を祝ってからにしよう。
愛する政宗の生まれた、今日という特別な日を祝って。
そんなめでたい席に、気まずい思いを持ち込みたくない。
自分でも何て臆病なんだと思うけど。
政宗の誕生日祝いを口実に、募る想いを誤魔化して。
でも、はっきりと政宗の口から拒絶を聞くのが怖かった。
政宗に傍にいて欲しくて。
ナンパから守ることを口実に一緒にいて欲しいと仄めかすと。
政宗はうっとりするような綺麗な笑みを浮かべて、私を守ってくれると言ってくれた。
もしも願いが叶うのなら。
私は政宗とずっと一緒にいたい。
ずっとこの手を握って離さないで欲しい。
守ってくれると言ってくれた時に、手をぎゅっと握ってくれたのが嬉しくて。
愛しくて。
「I love you」
思わず口をついて出た。
前の彼氏にも、Thank you.の代わりによく口にしていたから。
きっと、自然に聞こえていたはず。
深い意味には捉えられていないはず。
でも、それが私の本心。
言いたくても言えないから。
こうして冗談めかしてしか言えない。
気付いてくれなくてもいい。
それでも、私は貴方を愛してる……。
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