Eternal Flame -2-

少し熱めのシャワーを浴びながら、私は溜息を吐いた。
鏡に映った自分の姿を眺める。
良くも悪くも平均的な体つきだと思う。
服を選ぶのに困らなくていいけれど。
セクシーな体つきか、と言われると、本当に十人並みだと思う。

初めて政宗に出会った日のことを思い出す。
シャワーの使い方を教えた時のことを。
政宗の身体は眩しいほどに鍛え上げられていて。
ボディビルディングとかそういうのじゃない。
本当に、実戦向きの、綺麗なしなやかな筋肉。
無駄と言う言葉がそこには存在しない。


政宗……。
本当に私で良かったの…?
私じゃ釣り合わないよ……。


自分に自信が持てなくて、また一つ溜息が漏れる。
視界の端を大きなバスタブが掠める。
大人二人がゆったりと入れるほどの大きさのジャグジー付のバスタブ。

そう言えば、前の彼と、アメリカで入ったなあ、なんて思い出しながら。
アメリカのアパートには、共用でこういう大きなバスタブが備え付けられていて、住民は水着を着て入り、談笑する。
このバスタブよりもふた周りほど大きいものだけど。

前の彼に後ろから包み込むように抱き締められながらホットタブに入ったことを思い出す。
二人でのんびりととりとめもない話をして。
彼の温もりに包まれて。
とても幸せだった。


政宗とも、そうしてただ寄り添って。
抱き締められていたいっていうのは私の我侭なのかな……。


政宗と彼を比べているとかそういうわけじゃなくて。
ただ肌を重ねるというのが苦手なだけ……。


結ばれると途端に男の人は身体を求めてくるから。
それはただ温もりを分かち合うのではなく。
男の人の欲を満たすかのように貪られて。
嫌だと言っても、ベッドに縫いとめられて。
弱いところを攻め立てられて。
ねっとりと舌で嬲られて。
腕の中で喘がされながら、何のために抱かれているんだろうと思ってしまう。


でも……。
政宗は違うかも知れない……。
だって……。


政宗に口付けられて。
首筋に口付けを落とされて。
ぞわりぞわりとする不快感ではなく。
むしろ……。
我を忘れてうっとりとしてしまうほどに心地よくて。
ただ、我を見失ってしまうことだけが怖くて。
政宗の前で、我を忘れてはしたない姿を見せてしまうのが恥ずかしくて。

きっと政宗は色んな女の人を抱いてきているから。
比べられてしまう…?
だって、キスだけで、あんなに上手いんだもの。
政宗に抱かれてきた女の人達のことを想像すると、正直妬けてどうしようもない。
でも、私だって処女ではないのだから同じことだ。
それは分かっているのに、どうしようもなく哀しくなる。


政宗が好きだから…。
ただ腕の中に抱かれて愛を囁きあっていたいけれど。
でも……。


政宗ともっと深く繋がりたい……。
政宗の身も心も欲しい……。


ひと夏だけの恋だから。
私たちに残された時間はそう長くはないから。

花火のように華やかに艶やかに咲いて。
そして散っていこうと決めていたから。

政宗に抱かれて。
温かな腕の中で目覚めて。
朝二人でコーヒーを飲みながら。
窓の外の海を一緒に眺められたらどんなに素敵だろう。

きっと忘れられない思い出になる。

初めての夜だから。
一度しかない夜だから。


私は、私の全てを政宗に捧げよう……。


私は、不安を洗い流すように、殊更丁寧に身体を洗ってバスルームを後にした。
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