Love Phantom -3-

幸村は着物の合わせに差し込んだ手で、私の胸を愛撫し始めた。

「んんっ!!」

何で!?
何で、幸村がこんな事するの!?
幸村だけは、絶対にこんな事は出来ないって思っていたのに!!
政宗以外にこんな事、絶対に許したくないのに!!
私を殺しに来たんじゃないの!?

身体を縮こませて、幸村の腕を掴んで引き離そうとするのに、腕はビクともしない。
酸欠で、辛過ぎる身体には、もうそこまでの力がないのか、これが男の力なのか、幸村は構う事なく愛撫を続けて、胸の先をもてあそび始めた。

久々の快楽をこんな形で与えられるなんて思わなかった。
絶対に感じたくなんてないと強く思うのに、身体がビクッと震えてしまって、悲しくて涙が溢れ出す。

「さあ、いつまで息を止めていられるかな?クッ、そうか、ここが感じる所か…」

執拗に胸の先を攻められて、これ以上は耐えきれなくて、思わず喘ぐように息を大きく吸い込んでしまった。
多分、ほんの1分くらいの時間しか息がもたなかった。
鼻腔と口に、薬を目一杯吸い込んでしまって、すぐに、身体が痺れたように動かなくなって、立つことさえ出来なくなって、私は幸村に抱き上げられた。
すごい即効性なのに麻酔とは違う。
身体は動かないのに、触覚は変わらない。
いや、むしろ鋭敏になっている。
自分の流した涙が頬を伝っていく感覚が、妙にいつもよりリアルに感じる。
何かのドラッグ…?

「あれほど焦がれていた政宗殿がせっかく来られたのだから、せめて声の聞こえる所まで連れて行ってやろう」

幸村は、物陰を素早く移動しながら、村の広場から少しだけ離れた、納屋の中に入ると、私を下ろした。
政宗と佐助の言い合いが少し遠くで聞こえる。

「おとなしく、遙を渡せ、猿飛!!遙は伊達で預かる!!遙は俺だけのもんだ!!」
「今は、渡せない!!お館様と交渉してよ!!」
「武田の姫を押し付けられるのは御免だぜっ!!」

そして、刀が交わる音が聞こえた。
懐かしい、懐かしい、政宗の声…。
今でもあの頃と変わらず、俺だけのもんだって言ってくれてる…。
愛しさと、切なさと、今の状況が悲し過ぎて、涙が溢れる。

大きく息を吸って、叫ぼうとした。

「政宗っ!!」

でも、普通の話し声ほどの大きさの声しか出ない。
この距離じゃ、いくら呼んでも政宗には届かない。
痺れて動かない身体を何とか起こそうとしたら、幸村が覆い被さった。
そして、着物に手をかけて、合わせを勢いよくはだけられて、驚く間もなく、腕からも着物を抜かれて、すっかり上半身を裸にさせられてしまった。
袴を緩めて、腰の辺りまで引き下げられて、ウエストより少し下まで、露わになってしまった。

「嫌っ!!止めて!!」

覆い被さる幸村を押し戻そうと腕を動かすと、本当にそっと胸に手を添える程度にしか身体が動かない。

「意思の強い女だな。あの薬で、まだ身体を動かせるとはな。まだ、政宗殿を焦がれて泣くか。ならば、お前が会いたくても会えないようにするまでだ」

幸村は、私の胸をもてあそびながら、首筋に何度もキツく吸い付いて、キスマークを付けていく。
首筋に、隠し切れないほど、幾つものキスマークをたっぷりと刻み込まれる。

「いやっ!!止めてっ!!」

髪をかきあげられて、ぞくぞくとするような感覚に身を震わせる。
弱い、うなじの所を唇でなぞられて、キツく吸い上げられると、小さく喘ぎ声が漏れて、また固く唇を噛み締めた。
悔しくて、また涙が溢れる、

「お前の泣き顔は、本当に綺麗だな…。嫌がって泣く顔すら、美しい。男を惑わす泣き顔だ。しかし、拒絶の声はつまらぬな。今啼いたように、淫らに啼いてもらう方がこちらも楽しめる」

幸村は、胸の先をもてあそぶように攻めたて始めた。

「ああっ!!やっ!!いやっ!!あっ!あん!」
「いい声だ。その声でどれだけの男を籠絡して来た?啼く声もこんなに男を惑わすほど艶っぽく淫らだったとはな…。もっと聞かせてもらおうか」
「やっ!!ああっ!!」

身体がおかしい。
こんな酷い事をされて、こんなに感じるなんて、おかしい。
触覚が異様に鋭敏になっている感じがする。
自分の意思では身体を動かせないのに、快楽には素直に身体がビクッと跳ねて、悔しくてたまらない。
幸村は、忍び笑いをしながら、胸元へと唇を移し、また、キスマークを付けていく。
その間も、胸を揉みしだかれては、また先を執拗に攻められて、意思とは裏腹の、甘い喘ぎ声が止まらない。
悲しくて、悲しくて、涙が止まらない。
キスマークをたっぷり胸元につけられ、肩に、腕に、胸に、お腹に、脇腹に、次々に刻み込まれて行く。

「遙っ!!どこだっ!!早く俺の所へ来いっ!!」

また、政宗のよく通る声が聞こえた。
政宗に、こんな姿を見られたら、それこそ、政宗は怒り心頭で、全軍率いて、すぐに甲斐を攻め滅ぼすだろう。
多くの命が奪われる。

「ああっ!!政宗っ!!くっ…!!ううっ…」

政宗に会いたい。
会いたくてたまらない。
声だけじゃなくて、その姿を見たい。
でも、こんな姿で、政宗に会えるはずがない。
もう、記憶を辿っても、なかなか思い出せなかった愛しい政宗の声が聞こえるのに、その腕の中に飛び込めないのが、悲しくて、悲しくて、辛くてたまらなくて、涙が止まらない。

「政宗殿が、呼んでおられるな。しかし、行きたくても、行けまい。他の男に抱かれた痕をこんなに付けた身体で、政宗殿に会いには行けまい。ククッ!それにしても、いい眺めだな。身体つきまで、男を悦ばせるような、淫らな身体だ。形の良い豊かな胸に、細くくびれた腰」
「ううっ…政宗っ!!」

政宗を呼ぶと、幸村は、私の顎を掴み、深く唇を重ねた。

「んんっ!!」

抵抗する間もなく、舌を絡ませ吸い上げられて、背中がゾクゾクするような感覚に身を震わせた。
好きでもない男とのキスで、こんなに感じるはずがない。
嫌悪感でいっぱいなのに、どうしようもなく、何故か身体が敏感で、困惑する。

「んー!んん!」

顔を背けようとするのに、顎を軽く掴まれているだけで、動けない。
どんなにキスマークを付けられても、唇だけは死守したかったのに、それすらも奪われてしまって、心の中の何かが折れた。
幸村のなすがままに、何度も何度も深く唇と舌を蹂躙されて、やっと離れた時は、放心したように心の中が空っぽになって、ただ涙が止まる事なく、静かに流れていった。
敗北感と悲しみで、胸の中がいっぱいで、何も考えられない。
ただ、涙が流れて行く。

もう、政宗の声も耳に届かない…。
ただ、絶望の海の底へ深く沈んでいくような感覚がしていた。

「悔しいか?それとも、これで陥落か?クッ…あの薬にこんな使い道があったとはな。身体は動かせぬのに、感覚だけが研ぎ澄まされる、拷問用の忍の妙薬。捕虜の叫び声は聞き苦しいから、声も出せぬように作られてある。ただ、自白には十分な大きさの声しか出せぬ、よく出来た薬だ、全く」

ようやく腑に落ちた。
身体の異変の理由がようやく分かった。
もう一度、最後の悪足掻きのヒントを得られた。
そうだ、忍!!
村の広場からは少し離れているけど、すぐ近くで、それもこの狭い納屋の扉の真ん前で刃を交わす音が聞こえる。
だからこそ、幸村も囁くような小声で、私の耳に唇を寄せて話している。
これは、最後の希望の光!!
私は目一杯息を吸い込んで叫んだ。

「佐助えええええーっ!!」

刃を交わしてるのが、精鋭の忍なら、この声も届くかも知れない。
これは、最後の賭けだ。
あとは、佐助がどう策を練って、この危機を、そして、後ろに控えた大きな戦を回避するか。
私の仕掛けた最後の切り札がいつ発動するか、賭けだ。

「フッ…今度は佐助か…。佐助まで籠絡するとは、呆れた女だ」

幸村は、また私の唇を奪った。
手は休む事なく愛撫を続けている。
また袴が更に緩められて、恐怖に身体が震えた。

早く発動して!!
私の、最後の切り札!!

「やだやだ!!先生を連れてかないで!!うわーん!!」

やっと発動した!!
私の最後の切り札!!
本当は私自身がもっと早く使う予定だった、最後の切り札!!
政宗を撤退させられるのは、あの子だけ!!

頼んだよ、私の最後の、そして、最高のカード…。
そして、誰かが佐助に知らせに行っていますように…。

私は幸村のなすがままになりながら、快楽と絶望の海に再び落ちる最後の瞬間まで、祈った。

どうか、最後まで穢される前に、政宗が撤退してくれますように…。
佐助の策が早く発動しますように…。

ふっと意識が遠ざかるように祈りが消え、私はまた快楽と絶望の海に深く深く沈んで行った。

何も考えられない。
ただただ、この世で一番愛しくて、焦がれて止まない人の声をずっと聞きながら陵辱される、苦しくてたまらない、深い深い悲しみに打ちのめされていた…。
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