Someday my yearning becomes a reality thing
「んじゃあまた後で〜!」
「ああ」
事務所から現場へと向かう親友の背中を見送り、自販機でいつも通り水を買う光。
FHC設立当時から時間を共にしてきた鈴都が、自分とは別の人間とユニットを組むことになってからどれだけの時間が経っただろうか。
そんなことを考えながら買ったばかりの水を口に運び、やはり早く到着しすぎたと思う。
自分たちのレッスンの時間までまだかなりある。
カフェで時間を潰すかと、階段へ向けて足を進めたその時、
「あ、東さん」
ロビーの扉が開き現れたのは、家納才夜だった。
「家納か、早いな」
「東さんこそ」
今日のレッスンまでまだ時間がある。
マネージャーもまだ仕事が残っているらしいので、なんだかんだ2人でカフェへ向かうことにした。
朝が早いのでカフェスペースには人はいなかった。
光が「コーヒー」を注文すると、才夜も同じものでと言った。
「お前コーヒーいけんの?」
「コーヒーくらい大丈夫です」
「ふーん」
運ばれてきたコーヒーに何も入れず口をつける光。
それを見た才夜も同じように飲んでみるが、口に合わなかったようで顔を顰める。
「無理すんなよ」
笑い混じりにそう言われ才夜は少しムッとする。
「そういえば」
むくれながら砂糖とミルクを入れる才夜を尻目に光が呟く。
「お前とちゃんと話すのは初めてだよな」
ああ、そうだっただろうか。
そう思いこれまでを思い返してみる。
才夜は密かに光に憧れていた。
レッスンの際も、ずっと彼に近づこうと、隣に立とうと努力してきた。
だが、彼の隣にいたのはいつも鈴都だった。
設立当初からのメンバーだということを考えれば納得は行く。
それでも、才夜は光の隣に立ちたかった。
しかし、話しかけることはあまり無かった。
話してしまえば、自分の思いがバレてしまう気がした。
そして、憧れが憧れのまま終わってしまう気がした。
気づけばこの瞬間まで、ろくに話したこともない状態だったのだ。
「そう、ですね」
「お前俺のこと避けてたのか?」
「そんなこと…!」
「冗談だよ」
複雑な気持ちで甘くなったコーヒーを口に運ぶ。
「今日、メンバー発表されるだろ?」
「!」
今日は新ユニットの発表の日だった。
メンバーはその場で発表され、本人達にもまだ知らされてはいない。
「次は誰だろうな」
「……」
「俺も随分後から来たやつに追い抜かれたよな」
「そうですかね、あんなの運だと思いますけど……」
「運も才能のうちだろ」
あまり表情を表には出さないが、光の自分も早く活躍したいという想いは人一倍強いはずだ。
「俺、あんたの隣に立てますかね……」
誰にも聞こえない声で、才夜はそう呟いた。
「案外次はお前だったりしてな」
「え?」
思ってもみない言葉に才夜は目を丸くする。
「なんてな……」
「俺は……」
「ん?」
「俺は、あんたと一緒じゃないとやりたくない……」
俯きながらそう呟く才夜。
「そうかよ」
そう軽く笑い混じりに呟くと、光は時計を見て言った。
「そろそろレッスンルーム行くぞ。ちゃんとアピールしとかないとな」
「あ…!え……!?」
さっさとエレベーターに向かって歩き出す光に、才夜は慌てて立ち上がる。
「遅いぞ才夜、俺の隣に立つんだろ?」
そう言った光の顔は優しく微笑んでいた。
「!はい!!」
才夜も光の元へ走り出した。
その後のデビュー発表で2人がどうなったかはまた別の話。
end
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