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水甫×朱檜

 ――人見知りというよりは、人間嫌いの方が正しいんじゃないだろうか。
 自分の後ろに隠れて、愛想ひとつ見せずに顔を背けて、ぼそぼそと話す水甫を見て思う。
 朱檜に対しては、ころころと表情を変える男だ。驚いたように目を瞬かせて、困ったように眉を下げて。朱檜を見て、表情を一気に華やがせて笑う。
 水甫が人を嫌いだろうと、苦手だろうと、どちらでもいい。どちらだとしても、彼は朱檜とはよく話すし、表情だって豊かになる。本人に自覚はないようだが、彼の一挙一動を見れば、彼がどれほど朱檜を好きているかなど一目瞭然だ。
 水甫が朱檜を必要としてくれる限り、朱檜は彼と共にいるつもりだった。それが、果てしなく長い時間になろうとも。彼が、自身の感情を『友情』だと思い込んでいたとしても。
 そう思っていた。言葉を変えるのなら、そう、決めていたはずだった。

 ――あ、れ……?

 朱檜は見慣れてしまった天井を、水甫の肩越しに見つめていた。
 いつものように夕飯を食べて、風呂を済ませて、ちょっと歓談なんてものをして、二人並んでベッドに潜り込んだ。そのまま、水甫を抱き枕のように閉じ込めて眠る。いつの間にか出来上がったルーティーンをなぞっていたはずが、どうしてこうなったのだろう。
「みずほ、どうした?」
 名前を呼んで、視線を合わせる。
 薄暗い部屋ではろくに表情もわからない。明かりを背負っているのであれば尚更だ。
「あけびくん。あのね、おれだって男なんだよ……?」
 おずおずと躊躇いがちに紡がれる水甫の声は、聞き慣れた、頼りない柔らかさがある。しかし、朱檜を見下ろす彼の目は、見たことのない色をしていた。

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