だんなさんの続き
今日も綺麗な髪だなぁ。
天ちゃんの髪は光に当たると虹色に輝くんだ。派手にカッコイイよね。
「おーい、なまえ!次の奴らいいか?」
「はーい!」
今は絶賛柱稽古中!隊士はまず天ちゃんのもとで体力作りをして次の柱のもとへいく。まあ、それが大変みたいで、ゲロ吐きながら走ってる隊士がそこら中にいる。
私は気を失って倒れた隊士を連れて(担いで)山の麓、一番最初の地点へ向かう。
「みんな起きましたかー?」
「うっ…ここは……?」
「山の麓です」
「さ、最初の地点!?」
凄い。みんな絶望顔だ…。
「また、始めからかよ!」
「そうです。あのね、いい?鬼と戦ってる時は何度だって絶望することになります。何度だって。だから、今のうちになれちゃった方がいい。立ち上がれるようになることに」
そう。慣れるのが一番だ。鬼と戦ってる時はこんな甘い絶望ですまないから。何度だって打ちのめされる。
「とりあえず、体力作りをがんばろ!私も一緒に走って行くから」
どうして、天ちゃんが私をここへやったか。まあ、それは簡単。士気をあげる為である。
元々、私は愛され体質でして。可愛がりたくなったり、気を惹きたくなる様な気持ちにさせたりしてしまうのだ。それを利用して、隊士たちと一緒に行動することによって頑張ってもらうのだ。
辛そうな隊士の近くによって声をかけに行くと彼らの顔や雰囲気ぐ少し和らぐ。
「がんばれー!今日も空が青くてキレイだよー!」
「辛いって考えるより、今日のご飯の事を考えよう!鶴ちゃんが美味しいお味噌汁作って待ってるよ!」
「いいね!昨日よりもここにくるの速いよ!」
声のかけ方は隊士に合わせて色々。
考え方ってやっぱり人それぞれだからね!
「おう、なまえ。今日も派手によくやってくれたな」
「なんのなんのこれしき」
「お前が稽古に参加してから走りきる隊士が増えてきた」
「お役に立てたならこれ幸いです!鶴ちゃんとか須磨ちゃん、まきちゃんの作ったご飯のおかげでもあるし」
「そうか」
そういって、優しく撫でてくれる天ちゃんの手が大好き。でも、隊士の人たちがいるからこういうことはまだ言えない。天ちゃんとも呼べない。あー、夜になれば天ちゃんって呼べるのになぁ。
遠巻きで見てた隊士たちは、頑張って走り抜いた先で何を見せられてるんだろうとジト目を向けていた。
因みになまえは宇髄の方を見て笑っていたから気がつかなかったが、隊士たちは気がついていた。宇髄がこちらをちらりと見たときの、俺の嫁に手ぇ出すなよと、でも言うような恐ろしい笑顔に。
なまえが飴ならもちろん、宇髄は鞭だ。
「なまえさん、愛されてるなぁ」
「もう、両手どころか左右上下に花だよ。あの人」
「羨ましい…」
「炭ちゃん!」
他の隊士たちと話していた炭治郎の側になまえが寄ってくる。
炭ちゃんと呼ばれた炭次郎に隊士たちの視線が集まる。そんなに親しそうに呼ばれた事なんてない隊士達の視線が痛い。ブスブスささってくる。
「炭ちゃん、体はもう大丈夫?そこかしこ骨折してたんでしょ?」
「はい!もう大丈夫です!」
「後遺症もなさそうだし、良かったぁ」
なんだか、自分たちと話している時とはまた違った雰囲気だと隊士たちは感じて、なんだかわからないがなまえに視線が引き寄せられる。自分も話したい。頭を撫でて貰いたい。抱きつきたい。
隊士たちの頭にはは先ほど宇髄に向けられた顔は残っていなかった。
「おい、なまえ」
「あっ、て、、んげん様」
「う、宇髄さん?」
「来い」
「うっ……はーい」
「すまねぇな、炭治郎。なまえ、借りていくぜ」 「いえ!」
ぼーっとしていた隊士たちの頭が一気に晴れる。なんだったんだろうと思ったのもつかの間。宇髄の纏う怒気のせいで食事係りの嫁3人がくるまで隊士たちの顔は地面を見つめる羽目になったのだ。
「あらあら、なまえちゃんまたやっちゃったのか」
「炭治郎くんきてから増えたねぇ」
「全く」
そんな隊士たちは目にもくれず、夕飯の準備をしていく雛鶴たちに炭治郎は俺のせいかな?と1人あわてていた。
「て、天ちゃん…そんな怒んないでよ」
「お前は、自分の体質の事をもっと理解しろ」
「ごめん、なさい…」
「っち…」
「………ごめんなさい」
「あーーーっわかったっつの!俺も嫉妬したんだよ!ほらこい!」
捨てられた仔犬の様にシュンと目を伏せているなまえに根負けしたのは宇髄だった。いや、元々嫁には甘い宇髄がこういったことで勝てる筈がなかった。わかっていたが、伝えなければ自分の身も持たないと感じたのだ。もし、嫁に手なんて出されれば体力作りではなく体術稽古になってしまう。
手を広げ、自分の胸に来るように促すとなまえもおずおずと宇髄の腰に手を回す。
「あんまり妬かせるなって言っただろ」
「私が好きなのは天ちゃんだけです」
「なら、色恋の雰囲気だすのは俺の前だけでいい」
そういって、片手でなまえの顔を上に向かせて自分の唇を重ねる。
苦しい。そういう思い始めたのは宇髄の唇が重なってから随分と時間がたった時だった。
苦しいと伝える為に軽く胸を叩いて、目を少し開けると、そこには楽しそうに目を細めて舌を絡めてくる宇髄がいた。
「んっんーーっぷっは……」
「今日は、部屋に行くから準備しときな」
「お、お手柔らかにお願いします…」
今日はたぶん寝れないかなぁ。