03
「交渉を持ちかけたのはこっちだし、俺の事情から話そうか」
猫又は純白の服が汚れるのも厭わずに地面にどっかりと座り胡座をかいて言った。
俺もその辺りの岩に腰掛けて猫又の話の続きを待った。
猫又はざっくばらんな調子で続ける。
「ご主人に助けられた時、本当はあの場の離脱に最低限の魔力だけ貰うつもりだったんだよな。そんで自分のテリトリーで体力の回復と魔力補給をして、後々適当に恩を返してはいサヨナラ、って予定だったんだよ。だいぶ消耗してたし回復するにも数年単位かかる筈だったしよ」
ふむ、当初の予定では本当に命を助けてプラマイゼロの筈だったと。
「だろうな、……それがどうして?」
俺が相槌を打つと、猫又は赤い舌を出してにたあ、と笑った。
「……ご主人、あんたの血、美味すぎたんだ」
……???
曰く。
俺の血液は魔力結晶なんじゃないかと思うほど魔力の濃度も純度も高かった。
故に、普通なら人の形を取る程度に回復するまで数年かかる筈だったのが、俺の血一口でそれを成しえてしまったと。
俺の血一口に含まれる魔力が、一般人の全血液10人分以上なのだとか。
俺が未だに普通レベルの魔法しか使えないのは、多過ぎる・高純度過ぎる魔力のコントロールができないため無意識にセーブしてしまっているのだろう、とのこと。
セーブしながら放出している魔力量も一般の魔法使いよりはだいぶ多いらしいのだが。
ここまで説明した猫又は感嘆のため息混じりにこう言った。
「ご主人、お前さん、よく今まで生きてたな。」
と。
赤ん坊の時分に下級の魔物あたりに食われていなかったのが奇跡だと。
俺は曖昧に笑うしかない。
まさか赤ん坊の頃この世界にいませんでした、なんて言えるわけもない。
頬をひきつらせていると、猫又は冗談めかして
「本当に人間か疑わしいくらいだ」
なんて言った。
「……っと、ちょっと話が逸れたな。要するに、魔力をほんの少し拝借するだけのつもりが、完全回復どころか向こう10年くらい何も食わなくても問題ないくらい受け取っちまったってわけだ」
苦笑する猫又。
俺は口元に手を当てて考えながら訊ねた。
「……つまり、命を助けた程度じゃまだ恩を返しきれてない、と?」
「それもあるが、40点ってとこだな!ここからが俺からの“交渉”だ」
←|89/101|
→
しおりを挟む
戻る
top