強者の義務。


(side フレディ)

……情けなかった。
ただただ情けなかった。

僕はこれまでの人生、全てにおいてトップレベルでいたし、そうでなければいけなかった。全ては我がレクシス家の名誉を回復するために。

トップであるためにはなんだってしたし、相応の努力もしていた。幸い才にも恵まれていた。そこに疑いを差し挟む余地はなかった。

そしてそれら魔術的、頭脳的、社会的地位に恵まれた僕には当然、ノブレス・オブリージュ(強者の義務)も伴うのだ。
すなわち、財産や権力を持つ者には責任が伴うので、持たざる者を守ることが当然の義務なのである。

僕は“持つ者”だった筈だ。
皆を“護る側”だった筈だ。
そう信じて疑わなかった。

……それがどうだ!このザマはなんだ!
僕は圧倒的強さを持つ魔物を前にした時、ただ震えるだけで何も出来なかったではないか。
「背を預ける」と約したパートナーに護られた。逃がされたのだ。

彼は「策がある」なんて嘯いていたが、そんなのは嘘だと僕にはあの場で分かった。分かった上でどうしようもなかったのだ。
仮にあそこで僕が逃げ出さずに残っていたとしても、僕はきっと使い物にならなかっただろう。
彼は、ノエ=エトワールは、怯えて使えない僕に背を預けるよりも独りで挑んだ方が良いと判断したのだ!

彼だって恐ろしくなかった訳が無い。
けれど最悪でも一人逃せるこれが最善だと。
独りで薄い勝算に賭けようと。
そして彼はそれを成し遂げてみせた。
これこそが“強者の義務”。
僕は、僕は“持たざる者”だったのだ。

……こんなに無力感に苛まれたことは無い。
こんなに屈辱に思ったことは無い。
こんなに己を情けなく思ったことは無い。

今日の勝負に勝って理事長に願いたいことはあった。しかしそれは、心技体全てにおいて彼を超えてからだ。
彼を超えてこの恩を返さないうちは、真の意味で僕の目的を果たすことは出来ない。

そう、悟った。

(side フレディ 終)


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