第一話 さらば、俺の平穏よ 01
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  • 「高瀬 義幸くん。風紀委員に入ってくれないか」

    彼はゲンドウポーズでそう言った。
    どうしてこうなった。俺は天を仰いだ。
    ……あ、大丈夫ですよ、コレ『俺達、秘密警察』の1頁目で合ってます。間違っていません。

    こんな状況になったのにはマリアナ海溝より深い訳があるのだ。ちょっと現実逃避を兼ねて語らせてはくれないだろうか。




    私立太平ヶ峰学園。
    俺、高瀬義幸はここの高等部の2年生にあたる。
    この、海なんだか山なんだか分からないふざけたネーミングの学校は、絶海の孤島。
    孤島がまるごと学園なのだ。
    昔昔、どこぞのセレブが島をまるごと作るなり買うなりして作られたのがこの学園都市ならぬ学園島。

    東西南北どこを見渡しても海、海、海。船着場はなく、あるのは飛行場のみ。
    本土に戻るのは自家製ジェットでも持ち出してこなければ不可能。
    究極の閉鎖空間。
    それがココ、太平ヶ峰学園なのである。

    日本各地津々浦々の名家(具体的には自家用ジェットを持っているレベルの名家)の息子達が、小等部1年(6歳)から高等部3年(18歳)までの12年間に渡って放り込まれる。
    例外は1年に1人いるかいないかの外部編入生と、途中から赴任した教員くらいだ。

    究極の閉鎖空間に男だらけで閉じ込められたらまあ、そりゃあ歪むよね。謎の学園内ルール、謎の暗黙の了解が山のようにある。
    いわば、この島全体が一つの独立国のようなものなのだ。

    例えば……
    国で言う内閣にあたる『生徒会』、裁判所や警察にあたる『風紀委員会』の幹部。
    これらに入る生徒は、生徒達による“抱きたい抱かれたいランキング”とかいう舐め腐った人気投票で決まる。
    だもんで、実力は二の次。ただのイケメンや家柄の良いだけの無能が上に立つことになる。
    ……で、そんな人気者役員ズを囲んでワーキャーするのが『親衛隊』。

    ――要するにテンプレだ。察せ。

    まあ、役員全てが全て無能ってわけでもなく、中には家柄に見合う実力を持ったヤツもいた。
    そんな数少ないカリスマによって、この学園は御され、グラグラなバランスながらどうにかこうにか成立していたのだ。

    ……さて、気付いたやつはいるだろうか?

    実力を持ったヤツも“いた”。
    どうにかこうにか成立して“いた”。

    これらの文が全部過去形だってことに。

    そう、これらは全て過去の話。
    今は成り立っちゃいない。
    たった2ヵ月で、この学園はダメな方向に大☆変☆身☆しちゃったわけなのだ。


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