あとがき

【あとがき】(五千文字あります。読みたいところまで読んでくださいませ。)
 2018年内にケリをつけたいな、と朧げに思いつつ、ほとんどまったく計画性も実際にかかる時間もつかめないままの見切り発車の長編「ハルノオト」。この作品は結果として四捨五入すると十八万文字にもなる超大作になりました。総文字数は十八万文字です。
 これをここまでハイスピードで書く後押しになったのは、通っている高校の国語の課題でした。文字数制限なし、メール提出有りという規定で、自由に小説を書いて提出せよ……それだけならまあ、適当に今まで書いたのを出せばいいかとなっていたと思います。だけど、先駆者が居ました。何年か前にこの高校を卒業した生徒の一人、映画の道を志して文化祭の映画でもお手本にしろと言われた先輩、彼が八万文字に及ぶ小説作品を提出していたと聞きました。負けん気が強い私は、映画監督を志す青年という立場でありながら語り継がれる伝説となっている彼に勝りたい、小説家を志す娘として後輩に語り継がれる存在になりたいと思って書き始めました。手元にあった、細かく完成している長編のプロットはハルノオトのみ。それも今までなんども挑戦しては、一章のラストまで書き上げたのが一番書けたときの記録などという実績ゼロの状態からのスタート。全六章構成、予想文字数は十万文字前後──それを、26日間でこなす。今思えば頭が沸いているとしか思えないミッション(なおかつ文字数は増大し最終的には十八万文字となった)を見切り発車しました。
 結果的に、五章までは提出に間に合い、最終章のみを残して課題の締め切りはやってきました。その後一ヵ月さぼったり書き直したり読み返したりと削られ切ったエネルギーを補給しながら書き上げ、今日2019年1月4日に完結に至りました。
 完結において必要だったものがいくつかあります。親の協力、先生の後押し、そして先代の映画監督を志していた先輩の記録、一部公開だと言っても読みに来てくれた数名の方、そのなかでも特に章が終わるごとにイラストレーションをくれた上にファンだと言ってくれた友人です。七年間完結することなくグダグダと、小説家になりたいとだけ言ってたん文ばかり書き散らしていましたが、こうして一度長編を書き上げることができました。書きたいものを世に表して、主人公たちの物語に終止符をうつことができました。このあとがきまで目を通してくれる人は数少ないですが、この場をかりてすべての人にお礼が言いたいです。まだまだ小説家になるには程遠いですが、確かに大きな一歩を踏み出せたと思います。お付き合いくださり本当にありがとうございました!
 ここからは、反省点をグダグダと語ってみたり、人物についてグダグダと裏設定を流してみたり、この形に納まる前のハルノオトの話をしてみたりと無駄に長くなること間違いなしなあとがきになります。ひとまず、あとがきまで読んでくださりありがとうございました! もしよろしければ裏話も読んでいってくださいませ。







【裏話】

 作中でちょくちょく思った大きな反省点の一つに、お前ら体感能力高すぎねえかというものがあります。雪の上で寝たら凍死するなどと書いていますが、雪の上じゃなくても吹雪が吹き込んでくるような洞窟で寝れば凍死は免れないし、そもそも冬に野宿するんじゃねえよって感じが凄いです。あそこが現実だったら凍死待ったなしですね。実際に冬が来てデザインしたような服で外を出歩いたら死ねるなっと思いました。もう少し傍観してください(土下座)。
 それから、要素を詰め込みすぎました。そして、要素をバラけさせすぎました。四季の塔にかかわるファンタジックなストーリー部分、マコトとサヤカの恋愛未満のもどかしい相棒関係、シュカとシュリの兄弟間の話にマコトとミコトの双子設定、そしてマコトとシュリが館で起こした事件、シュリとミコトの恋愛関係、ナツの守り人としての一面、サヤカと家族の話、そしてサヤカが王女となる設定などなどそれひとつで一本書けそうなテーマが勢ぞろい。何を書くつもりだったんでしょうか。プロットはとてもしっかり立てたつもりだったのですが、主人公のキャラクターが立っていませんでした。三章四章なんてシュリとマコトが主人公ですよあれ。眠気を堪えながら書いていたゾーンとはいえもう少し何とかならなかったものかと、被ってくるキャラクター制と持っている個性の調整を根本的な問題から解決するべきだなあとおもいつつのお話でした。
 そして王都、王都は本当に大きなミスをしています。国の形についてです。陸続きのリチアドと、海に浮かぶ王都、そして半島がその王都によって繋がれた王国だと書いていますが違います。半島ってなんだよ、島です。ただの島ですあれ。陸続きのリチアドと王都と島を合わせて半島になる仕組みでマップを書いていたのですが表現ミスがひどいです。ついでにいうなら海の上に浮かぶ王都なんていくら塀が高かろうが防御力低すぎでしょ国奪われても知らないよ。
 それから、プロットの変更です。ほんとうは四章でもっと大掛かりな事件が起こるはずで、その全貌はと言えば二章に登場した悪党「イアン」とその一味がナツとシュカ、そしてサヤカとマコトを逆恨みして、シュカとサヤカを人質に奪うという内容──つまり誘拐事件です。もちろん残った四人で助けに向かうのですが、シュカを救出後もサヤカをみつけられず、一番奥地にいたマコトがようやくサヤカを見つけたところで、マコトが質に取られてしまい、サヤカに僕はどうなってもいいから逃げろと言って──怪我が治ってるからマコトが私を庇う必要なんてない、と押し問答になる予定でした。そこで約束なんてなくても僕は君を守りたい、とマコトが宣言し、そこにシュリがやってきてマコトたちもろとも眠りに誘うという内容のもの。五章はサヤカの悪夢スタートというところ以外、本編と全く違いますね。でもここで事件を起こす必要はないという判断と、如何せん見切り発車なもので、三章でマコトくんの精神が安定してしまったというのが大きいです。ここで今更決意させる必要もねえと判断しました。そしてこれ以上サヤカちゃんの心を奪うことと言えば約束、それだけです。結果的に怪我が治るのを6章まで延ばし、四章からは約束にフォーカスした内容になりました。そしてそれによって五章と六章の既存のプロットが役立たずになり、書き直しました。おかげでイアンはリストラされるし、眠らせるために酒場にぶち込むことになりと大わらわ……
 そして五章でも大きな変更がありました。キャラクターを根本から覆すような設定変更は、今回執筆中に限ればナフェリアにしか起こりませんでした。そう、五章で正体をあらわにし、サヤカの身分を明かした彼女です。彼女はもともと守り人なんかではなく、本当にただの旅の便利屋でした。それでしかなかったのですが、五章のプロットを書いている間にいつの間にか……本当にいつの間にか守り人になっていました。不思議なものですsね(すっとぼけ)。今思えば、表記はナフェリアのままでよかったし別に偽名である必要なかったなに考えてたんだろ当時の私を海に沈めようという感覚です。作中で表記が変わるの本当にやめたほうがいい。誤爆する。
 表記と言えばシュカもそうです、彼の一人称本当にブレすぎじゃない?何考えてるの?ってぐらいぶれてます。俺で通すつもりだったのにいつの間にか僕になってるし、でも子供相手には俺だし、てめえ何考えてんだってなった挙句に丁寧に喋るときは僕、という形で落ち着きました。丁寧に喋るならわたし、という一人称で喋ってどうぞ。
 そして最大のどんでん返し、サヤカ王女設定。あれは最初から決まっていたし、ヒントはいろいろちりばめておいたはずです。そして同時に、私はミスリードを狙っていました。二章の食事シーンでわざわざ髪色眼色の話をしたのには理由がありました。王女の双子の姉か兄、彼らをシュリかミコトのどちらかと勘違いしてほしかったのです。ミコトはのちになって考えればシンプルにありえないので当時の私をぶん殴るとして、実際に正体が明かされるまでの王女像はすべてシュリに寄せました。個人的にはシュカと出会ったあたりからん?こいつ姫じゃねえな……?と思ってほしかったんですがたぶん誰も気が付かなかった。もう少しうまく、派手ながらにもあからさまでなく伏線を張れるようになってください。そして六章、ナツの高所恐怖症設定はどこに行ったんですか???
 そしてこれからは今後の話。マコトとサヤカはきっとまた遠回りしてもだもだしてを繰り返しながら近づいて行って、きっと最後の一歩はサヤカちゃんから踏み出して、幸せになるのでしょう。今後マコトくんがどんな未来に進むのか私はあまり明確には見えていませんが、多分料理人になるんじゃないかなあと思います。街の食事処兼雑貨屋として、サヤカちゃんと一緒にミドハンスなんかに店を構えているんじゃないかなあと。彼らはこれからも一緒です、運命の出会いだったので。
 そしてミコトとシュリ、これはいずれ書きたいですが、最終話で言っていたミコトの夢──それはマコトが目指して折れた『魔法騎士』です。マコトを超えたいから、とかそういう話ではなく、自分の意思で彼は魔法騎士を目指し、そして兵士入りします。シュリもやがてはロクスの館で使用人であった身分を隠し宮廷魔導士として名をあげます。ロクスの味方は少なかったので、おそらくシュリが顔を出していてもあからさまに咎めるものもいないでしょう。ミコトとシュリはひと悶着ののちにきっと、初の大喧嘩でもしたあとに結婚するのではないかなと思います。
 そしてナツとシュカ。彼らは私の中では、いずれ生を共にするふたりだという意識を強く持って書いてきました。守り人である二人は、一年の四分の一を、二人合わせて半分を塔の中で過ごし、その間は誰とも会えないという過酷を強いられています。ナツはそう言ったことになると、誰か一人とお付き合いしたり、結婚したりというのに気後れしてしまいそうな性格なので、向こうからお誘いが来たとしても全部お断りしていると思います。シュカは同じ境遇で同じ身分で、そして大体五、六歳の差しかなく、ナツのことを先輩としてひどく慕っています。いずれそれが恋になってもおかしくないと、そしてシュカならナツの相手に申し分ないと、そう思っています。エンドマークのあとも守り人コンビとして仲良くはしているでしょうが、ナツからアプローチすることは絶対にありません。シュカが何らかのきっかけで一歩踏み出せば、なし崩し的にナツはシュカと共に歩むことになると思います。
 
 作中でキャラクター同士がけんかしたり気まずくなったりするシーンを書くのが得意でなかったり、どうしても優しすぎるキャラクターが揃ってしまったり、そして上記につらつらと何千文字もあげた反省点にと、そしてまだまだ語り足りない人物たちについての話など、書きたいことはたくさんありますが、流石にここらで終止符を打っておこうかなと思います。
 ハルノオトは、長編としての私の処女作と言えるでしょう。いろいろとひどく目も当てられない部分もありましたが、同時にこの作品を好きになってくれた人もいました。絵も描いてくれた人もいました。まだ作品を直視して削ったり書き直したりといったことができるような時期ではありませんが、いずれこの作品は宝物になると思います。プロットと作品のメモにノートを一冊使い、高校一年生の十一月をほとんど消費して書き上げたこの作品を読んでくださり、ほんとうにありがとうございました。何百回もお礼を言いたいところですが、流石にここらで取りやめることにいたします。
 ありがとうございました!

                                   空野若菜