GIVE ME!!!
構ってくれない。そう、切実に思うことが増えた。
瀬見英太という男は優しい。のだが、バレーにのめり込んで彼女であるさつきを置き去りにすることがある。瀬見がそういう一途な人間であることは重々承知している。寧ろさつきはそんなところが好きだったのだが、ここまでなおざりにされてしまうと寂しさを感じてしまうわけで。
「英太どこ寂しい無理死ぬ……」
なんて死んだ魚の目をさせながら、男子バレー部が使っている体育館の扉を開けた。近くにいた部員さんが、ギョッとした目で見ているがさつきは関係ないかのように二階にあがる。
きっと、所属している写真部の部長はさつきが来ていないことを怒っているだろう。ただ、さつきはそんなことを考えるよりもギャラリーにいたいという気持ちが勝っていた。瀬見を見つめながらに、格好いいなぁ、とか今少しズレて悔しそう、などと瀬見についてひたすらに考えていた。気付けば、先程まで入り口にいた部員が瀬見の近くに寄りさつきを指さした。いることを教えてくれてるのかな、なんて期待していると、瀬見とバチりと目が合う。瀬見は驚いたような顔をしていたがスグに口パクで『あと5分』と言われる。
−−−
休憩が入った瞬間に瀬見はさつきに駆け寄った。
「さつき、部活は?どうかしたのかってうわっ」
瀬見を確認するや否やさつきは周りの人を気にせず瀬見に抱きついた。
「英太……寂しさで死にそう」
「は?!えっ、いきなり、どうした」
いきなりの事で瀬見は慌てて身をこわばらせたが、一息を着くと頭をポンポンとなでてくれているの優しいなぁとさつきは身にしみて感じる。
「最近、一緒にいること少なかった、から、寂しくなっちゃった」
口に出して、迷惑だったかもしれないという考えが浮かび不安になりながら、瀬見の顔を見上げる。
「…ッ!俺こそ少しさつきといる時間あまりとってやれなくてごめんな」
これからはしっかり時間作るから、と、優しく語りかけるように言う。
「じゃあ、今日一緒に帰ってもいい?待ちたい」
「!もちろん!」
くだらない話をして休憩から戻って行った。さつきは充電されたかのように最初とは売って変わり、嬉嬉として部長に怒られに行ったそうな。
「あ、ねぇ、手繋いでもいい?」
「言われなくとも」
(それなら、今考えていることも分かるのかな?)なんてチラッと瀬見を見上げると少し困ったように笑って、唇を重ねてくれた。
作成日:2017/11/12
更新日:2017/11/13