動揺:森のくまさん
学校の帰り道なんかは、階段を上がる所で大体の友人と別れる。
それに僕は部活は入っていないから、帰る時はいつも一人なんだけど。
行き?行きは承太郎と一緒に、取り巻きの子たちもいるから時々は遠回りして。
早起きしてもいるから、恋する女の子ってすごいよね。
『(だから・・・うん、誰かの視線を感じるとか、きっと黄昏で暗くて怖いからだよね?)』
気のせいだ・・・と思う。
気になって「怪しいヤツがいないか」近所の野良猫に僕の後を見てもらったけど、そんな奴誰もいないもしくはよく見る承太郎のファンの子が付けてきているぐらいだ。
ファンの子はたぶん隙あらば僕に承太郎の情報をしゃべってもらいたいんじゃないかな?
話しかけないのはきっと恥ずかしがり屋さんなんだろう、目的の承太郎ではなく僕の後をついてくるぐらいだから、きっと。
承太郎「おい、晃。こんなところに寄り道して・・・買い物か?」
『承太郎?びっくりした・・・急に出てくるから;
えっと、お母さんが帰りに寄れたら卵が安いからって・・・』
承太郎「お一人様一パックだろ?ついて行ってやる」
『!有難う承!!』
しばらくすると視線も感じなくなる時がある。大体は家にまっすぐ帰らない時。
買い物や、ちょっとした散歩なんかで寄り道する時に、ふと気にすると視線を感じない。
そういう時こそストーカーだったら付いてくると思うから、きっとただ単に帰る時間と道が一緒なのだろう。
『あれ?承太郎、こんな時間までどうしたの?一年生は僕らより終わるの早いでしょ?』
承太郎「・・・屋上で一服していたらこんな時間になっていただけだ」
『そう?(最近いつもこの時間だけど、日課なのかな?)
じゃあ折角だし今日も一緒に帰ってもいいかな?』
承太郎「・・・帰る家が同じなんだ。・・・当たり前だろ」
あぁあとそうだ、承太郎と一緒に帰ると視線が気にならないのか、それとも承太郎に怖気づいて逃げているのかわからないけど、全く視線を感じない。
我が弟ながら承太郎さまさまだ。本人の気付かない所でいいボディーガードになってもらっているのだから、こんどお菓子でも作ってあげよう。
おかしい・・・
最近身近なモノがなくなっている。
最初は鉛筆とか消しゴムとかで、僕を落としているんだとばかり思っていたんだけど。
こうも立て続けだとちょっと不気味というか・・・。いや、でも本当にただ落としているだけかもしれない。
最悪、机の上に置いておいたのを借りパクされたか?
あ、でもこの前は承太郎が間違えて持ってたんだっけ?仕方ないよね、同じの使ってるし部屋も一緒じゃ紛れ込んじゃうことはよくあるから。
『・・・あれ?』
承太郎「どうした?忘れものか?」
『う・・・ん、たぶん?んー、でも最近よく物がなくなるんだよね・・・うっかりしてるのかなぁ』
承太郎「だろうな、お前は少々・・・いや、だいぶ抜けているからな」
『う゛っ・・・でも気を付けてるはずなんだけど、確かに学校ではあったし』
承太郎「・・・何がなくなったんだ」
そういいながらも僕のカバンを一緒に見てくれる承太郎は優しい子だなぁってしみじみ思います。
『リップ』
承太郎「Σなっ!?おい俺はそんなの知らないぞ!!」
承太郎の凄い衝撃的な顔・・・男子だって唇乾燥するといたいからね?そりゃどうどうとは塗らないけど、こっそり塗っておかないとこの季節すぐ割れていたいんだからそこまで驚かなくても。
まぁリップとかも転がって行きそうだし?仕方ない、半分ぐらい使ったからそろそろ変えどきだから買い換えようか。
『え゛!!?』
承太郎「今度はなんだ!!」
『・・・・・・これ』
カバンに履いていた小さな紙を承太郎に見せる。
承太郎は僕の手から素早くそれを奪い取り、それを見た瞬間いつも以上に眉間にしわが寄り目がきつくなり、こめかみの欠陥が今にもはち切れんばかりに浮き出ていた。
『ど、どういうことだろう・・・』
承太郎「やはり・・・誰かに付けられてたか・・・」
『え!?』
承太郎「おい、明日徹底的に犯人を探すぞ!」
『う・・・うん・・・』
承太郎の気迫に押されうなづいてしまったが、え、マジにストーカーの仕業だったの!?
その紙には、前から好きでしたと言った一文と、俗に言うラブレターのような内容で、ちゃんと読み終わる前に取り上げられちゃったものだから何が書いてあったかわからないし、今はもうその拳の中でぐちゃぐちゃになっているから確認できない。
いや、読ませてほしいとか言ったら今にも僕が殴られそうな気さえする。
・・・まぁそんなことしないっての解ってるけどね。
そんな承太郎は登下校どころか教室にまで付いてこようとしたから、自分の教室に戻るように言えばすぐに引き下がってくれた。
『承太郎?どうしたの急に止まって』
承太郎「・・・先に帰ってろ晃」
『え?・・・う、うん』
あれから、ずっと一緒に登下校しているんですが、そんな日が数日続いたある日。
承太郎が急に立ち止まって後ろを振り返った。
さっきまであんなに柔らかかった表情が一瞬でかたく不機嫌に変わり、何があったのかなんて聞けないまま僕は早足でその場から逃げるように走った。
いつもの階段まであと少しという所で、承太郎が心配で立ち止まる。
何があったんだろうか、
また喧嘩?だったら止めに行った方が・・・
『え?(な、なんで・・・最近はずっと感じなかったのにっ・・・)』