『わわ、イギーさん!?早く帰らないと皆心配するよ!?』

イギ―「[こっちから飯のいいにおいがするぜ?折角だから食って帰ろう]」

『こっちって、森の奥深くは迷いやすいから入っちゃだめだってポルさんが』

イギ―「[なぁに、俺の鼻がありゃまよわねぇよ!何より腹が減って仕方ねぇ!
お前が腹が減ってる野犬に弁当やっちまったせいでな!]」

『うっ;それは・・・すいません;』

イギ―「(まぁ、そんなとこも、こいつのいい所なんだろうけどな)
[あの電柱野郎には俺から言っといてやるよ]」

『有難いんですがその電柱野郎含め翻訳して伝えるの結局僕だからね!?』


町にいばらを売りに行き、完売まで粘っていたら町を出る時には夕日が沈み始めていた。
町から離れた林の奥にある家に急いで帰る途中で、お腹をすかせた野犬に襲われ・・・もとい助けを求められ、持っていた夕飯がわりのお弁当を全てあげてしまい、いま現在お腹の音が鳴りながらも走っている。
そういうイギ―さんも自分の分を子犬に渡していたので、そこまで怒ってはいないのだろうが、正直お腹が減って減って仕方がない。
そんな中、レストランも民家も無いはずの、野獣の森と呼ばれる森の奥から、イギ―さんの言うとおり僕でもわかるほど良い匂いが漂ってきた。


『でも、あんまり暗いところは怖
イギ―「[このへたれが!良いからついてこい!]」

『あああイギ―さん待って!一人にしないでっ!?』


もう日も完全に落ちてしまって霧も出てきている森の中、烏の泣き声ですら悲鳴を上げていたのだから、こんなところに一人にされるぐらいならイギ―さんの後について行くことにした。

イギ―さんの後に続いてしばらく走ると、霧が晴れて立派なお屋敷が目の前に建っていた。
多少壁にヒビも入ってツタがはって雰囲気もあり、どの部屋も光がついてはいなかったが、庭にある綺麗に手入れされた白薔薇がその不気味さを消して、どこか神聖な雰囲気を醸し出していた。
ぼーっと見ていたら、いきなり天気が崩れ始め、雷鳴とともに雨が降り出して来た。


『こんな所にこんなお屋敷があるなんて知らなかったな。誰か住んでいたのかな・・・』

イギ―「[おい、この門開いてるぜ!雨宿りしていこう!]」

『イギ―さん!?勝手に入っちゃだめだってば!!』


僕がそのお屋敷に見とれている間に、イギ―さんは玄関が開いていたのか、勝手に屋敷の中に入って行ってしまった。
追いかけて薔薇の庭をぬけ、扉から顔をのぞかせ中を見ると、きれーなエントランスに、絵画等の装飾品や彫刻などの美術品が埃一つなく飾られており、奥から良い匂いがただよている。
誰か人がいるのかと思い、すいませんと何度か声をかけてみるも返事が無く、扉の音が聞こえた先にはイギ―の姿があり、そこからは光が漏れ出していた。


『イギ―さん!?勝手に入っちゃ・・・ってあぁいちゃった。
そこに人がいるのかなぁ・・・おじゃましまーす?』

イギ―「[来いよ晃!食べ物がいっぱいあるぜ!!!]」

『え?わぁ、ホントだ!!ってイギ―さん勝手に食べちゃだめだって!!
流石に怒られるって!!!』

イギ―「[だけどよ、そこにどうぞお召し上がりくださいって書いてあるぜ]」

『ほんとだ、「森の奥に迷い込んで疲れただろう。食事をとって休んでいくといい」?
でもこれって僕達に?ほかのお客様かも』

イギ―「[人間用に一食分と、ご丁寧に犬用の更に肉が盛りつけられてて、俺たち二人分しかないんだぜ?ほかにどこの誰だって言うんだよ]」

『そ、それもそうだけど・・・』


テーブルの上にはまさに僕ら用にと置かれた食事と手紙が置いてあった。
食事は出来たてなのか湯気が立っていて、良匂いがするし、暖炉には薪がくべられていてとても温かい。

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