猫の性(さが)
その日の夜も、いつものように一緒にシャワーを浴びる。
バスタブにお湯を張り、浸かる事が大好きな晃に合わせて、俺も脚の間に晃を入れるようにして一緒に入る。
ディオ「(・・・やはり頭には何もない・・・よな)」
『頭がどうかしたの?ずっと気にしているみたいだけど』
ディオ「いや、あの時の感覚が少し残っていてな・・・」
『あの時の?あぁ、耳を触られると、なんだかゾクッとするんだよね。
あれってなんでなんだろう?ディオ兄さんは知っている?』
ディオ「あの感覚は・・・いや、晃はまだ知らなくていい事だ」
脚を折りたたんで、俺に向かい合うように入っている晃と少し話した後、晃はくつろぐように俺に背中を預け、反対側の同じ方向に脚を伸ばす。
俺の脚に晃の足が、胸に晃の肩が当たる・・・。
目下には、滴の舌たる濡れ羽色の黒髪が蒸気した頬にしっとりとついていて、鼻腔に襲う洗いたての石鹸の香りに思わず生唾を飲み込んだ。
あの日のように舐めまわしたい衝動をグッと押さえ、口元を己の手のひらで押さえつけ頭ごと視線をそらす。
おかしい、やはり猫の耳が出てはいないだろうか。
ディオ「(おかしい、体の熱が引かない、むしろ酷くなっているッ)
はぁっはぁっ///」
『ディオ兄さん?のぼせちゃった?お風呂出ようか?』
ディオ「Σ!!い、いや、先に出ていてくれ晃。
俺はそのッ・・・洗ってから出ることにするよ」
『そう?じゃあ先に出ているね』
晃の甘く濃厚なにおいが立ち込める空間に二人きり。
目の前には首筋どころかその裸体を無防備にさらしている晃ッ。
くそ、あの日の晃の声すらもプレイバックして俺の脳内を襲ってくる。
今は猫ではないのだ、本能のままかぶりつくわけにはいかず、俺は何とかばれないように晃を先に上がらせる。
熱もなんとか処理し、先に上がった晃はベッドの上でクッションに腰を預けながらうつらうつらと転寝をしている。
俺を待っていたのだろう、髪も乾かし終え、ベッドに乗り晃の隣に入る。
ディオ「晃、ちゃんと横になって寝ないと腰を痛めるぞ?
ほら、布団も肩までかけて」
『んー、ありがとうおにいちゃん・・・』
ディオ「ふっ(呼び方が昔に戻って、よほど眠たかったようだな)
お休み晃、いい夢を」
前髪をそっと撫で上げ、額に優しくキスを落とすと、俺も晃を抱えるように中にもぐりこむ。
すぐさま俺の胸に抱きつき、鎖骨に顔をうづめる晃の頭を、出てしまっている猫耳も含めて優しく撫でる。
その肌を舐めたいと思うのも、香りにひきつけられるのも、体に触れたいとも触れてほしいと思うのも、全部が全部猫になった時の後遺症だ。
猫の性質ゆえ、仕方のない事・・・のはずだ。
再度、左手で自身の頭の上を撫でる。腰のあたりに手を当て、尾がないかを確かめる。
右手で撫でているようなピクピクと動く耳も、布団の中で動いているであろう晃の体をくるんで俺の脚に当たっているふさふさのしっぽも、晃にしかない。
ディオ「(なのになぜ、こんなにも・・・)」
『(それにしても、猫のディオ兄さん可愛かったなー。
あの日見た金色の猫よりずっと綺麗でフワフワして、いい匂いだった。
もう一度見たいなんて思ったら、ディオ兄さん怒るかな?)』
ディオ「(くそっ、さっき風呂場で収まったと思ったのだがまたっ///)」
俺は未だに「猫の性」が晃限定で残っているのだろうか。