『ディー、エンヤ婆を見なかったか?』

DIO「本日もか名前、彼女はいつもの部屋にいるだろう。私が案内しよう」

『いや、君の手を煩わせるわけには』

DIO「なに構わない、私も丁度用があったんだ」

『そうか、ならお願いするよ』


ディーの館には、個性的な人が沢山いる。
とはいっても、実際に部下という大勢の人間に会ったのはここにきて数日後の一回のみで、その他は俺にスタンド発現を予言してくれるエンヤ婆と、世話役のテレンス。
彼の側近の部下のヴァニラぐらいだ。
そして後者の二人も、必要最低限の会話しかなく、テレンスは私の食事や服の用意をディーの命令で行い、ヴァニラはディーの不在時に護衛だと言ってそばにいてくれる。
特にヴァニラとは会話という会話をした事がない。目すらも合わせてくれない。
嫌われているのかとも思うが、ディーに膝をついて頭を下げている彼は俺にも同じ態度なのだからきっとディーの友人だと思って遠慮しているのだろう。
仲良くなれたらいい。別にこの人が好きというわけではないが、ここ数日、会話という会話はディーのみ。俺の言葉に反応してくれるのはディーだけだ。
彼らはもともと寡黙なのだろうか、それとも俺の知らないお国柄の立て社会の性なのか「必要最低限の会話しか許されておりません」という。
ならば仕方ない。それにディーの部屋と食堂以外は行くならばエンヤ婆の部屋ぐらいだ。
そこに行くのも一人で出歩くなと言われた。屋敷内にいつ敵のスタンド使いが侵入するかわからないと。
スタンドを持っていない俺を心配してくれる。

ディーは本当に優しいやつだ。
見かけや、態度からはわかりにくいだろうが、こうやってそっと俺の肩に手を置く所や、暇を感じた俺に好みの本と紅茶を出してくれる所なんか、承太郎に似ている。
それに、年上だろう彼が時折見せる二人きりの時に甘えた仕草や無邪気な笑顔は、まるで弟がもう一人で来たかのように感じた。
食事もおいしいし服もある。風呂も部屋についているし、他の部屋は誰か使っているのか知らないがベッドもディーの物を一緒に使わせてもらっている。
だが、焦りは依然消えないまま、むしろ日に日に増している。ちゃんと休んでいるはずなのに体もだるく、ずっと妙な眠気と気だるさが襲って筋肉痛のような鈍い痛みさえある。
それはきっと、昔は良く見ていたあの金髪の少年の夢を、ここ数日毎日見ているからだろう。
雪の降る古い外国の町の中、道に横たわり冷たくなっていく俺を手を握って涙を流しながら必死に呼んでいる少年・・・。

エンヤ「貴方様のスタンドは眠っておられますじゃ。過去の記憶とともに深い眠りについておられる」

『過去の?俺、小さい頃のことも覚えてるけど・・・』

エンヤ「前世の記憶、というものですじゃ。それが目覚めればあるいは」

『前世・・・そっか。流石にそこまでは覚えていないな・・・そんなものどうしたら思い出せるんだ』

DIO「なに焦る事はない、じっくり思い出せばいい」

エンヤ「未来は常に動くもの、今日やっと過去の記憶が見えただけ。また明日きなされ名前様。
そしてきっとDIO様がお力になってくださいますじゃ。片時も離れる事のなきように」

『・・・有難うエンヤ婆』


今日もまたスタンドの発動はなかった。
まぁ、今回はいつもの予言だけでなく前世の記憶というキーワードも出てきたのだから少しは進展があったのだが。
ディーと共にまた彼の部屋に戻る。暗い廊下を歩く時に、初対面の時から彼は俺が転んでもいいように必ず腰に手を添えてくれる。
過去の、前世の記憶。もしかしたらあの少年に何か関係があるのだろうか。
夢の風景は日に日に内容が濃くなってはいるものの核心に迫れない。まるで目の前に欲しいものをぶら下げているのにあと一歩で手が届かないようなもどかしさ。


『・・・前世の記憶なんて。本当にあるんだろうか』

DIO「名前?」

『そんなものっ思い出せるわけがっ!!
っ、すまないディー、君に当たってしまった・・・君にはこんなによくしてくれているのに』

DIO「・・・もしかしたら、私には君の記憶を戻せるかもしれない」

『ほんとうかっ!?』


部屋について、この生活で溜まっていた不満を彼にぶつけてしまった。
彼は関係のない俺をここまで面倒みてくれているのに、彼には俺よりも優秀な部下がいるのにこんな俺にも手を差し伸べてくれる。
俺の話す少年の事について、ディーは心当たりがあると言っていた。
なんでもいい、平穏で変化のないこの状況から少しでも進めるのなら、間違って道でも構わないとすら思えてきた。
だから俺は優しい目の奥で、何かが光ったのを、俺は気付けなかった。


『ディー?なにか、すごく甘い匂いがしないか?』

DIO「力を抜いて・・・私に任せて名前・・・」

『ディー・・・?なにを・・・こ・・・れは・・・』


ディーに促されるまま寝室の扉を開けた俺は、たちこめる妙な空気急な眠気に襲われた。
なんだこの匂い・・・何処かで・・・くそっ意識がっ

そうだ、この匂い

俺が日本にいた、ここに来る前の自分の部屋でっ・・・


『いや、そのれより・・・昨日もっ・・・』

DIO「おやすみ兄さん・・・手を握っていてあげよう」


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