クロートーの気紛れ
どじゃああん!晃君でーす!登場の時の効果音に意味はないよ!そして凄いデジャブな事を言っている気がするよ!さぁてそんなことより、みんな今僕がどこにいるか解るかな?ジョースター邸?エリナさんのおうち?ディオ兄さんと一緒にお買い物中?
ぶっぶー!!正解は貧民街の中でーす!
…何故?まさに今起こったありのまま話すぜ状態なんだけど、僕は確かディオ兄さんを止めにウィンドナイツロットに向かって森の中にいた筈なのに…うむむ、一先ず裏路地に入り猫の姿に戻ろうとするが、戻れない。えっ!?なんで!?いや、僕は元々人間だからこれでいいんだけどいやいやいや!!…どうしょう…僕まだ英語…不安が残ってるんだけど…
何故か猫耳だけは出せるので、猫耳を出す。勿論他の人にバレないようにスピードワゴンさんから貰った帽子を被る。これで言語問題は無くなったが、どうにもならない現状に項垂れ肩を落とす晃の後ろから少し高い声が響く。
「ねぇ、君大丈夫?」
「うりぃ?」
「君みたいな子がこんな所にいるなんて、迷子かい?」
声がした方を振り向けば銀髪の少年とその少年の後ろに隠れるようにしてこちらを警戒したように伺う金髪の少年が目に入る。あれ?あの金髪の少年って、
「ディオ兄さん…?」
小さく名前を呼べばびくりと記憶の中より小さなディオ兄さんは体を震わせてから銀髪の少年の背中に完全に隠れてしまう。もしかして、人違いだったのかな?そう思い視線を銀髪の少年に合わせればじっと動かずにこちらを見ている琥珀色の瞳に少し後ずさる。
「…すこし、質問してもいいなか?」
問い掛けなのに拒否を許さない声音にびくりと肩が揺れる。何この人怖い。びくびくと体を震わせていれば困ったような顔に変わり顎に手を当て「うーん」と少し間延びした声を出す。
「ごめんね、怖がらせるつもりはなかったんじゃよ。
ただどうして私の弟の名前を知ってるのかなーって思ってね。もしかして、ディオのお友達だったかのぅ?」
「えっ、あの、その、僕のお兄ちゃんに似てて…名前も一緒なんですね!(と言うかディオ兄さんだよね?あれ。めっちゃちっちゃい!!)」
「なるほど、すまんのぅ…最近ここいらは人攫いが多くてのぅ…」
「そ、そうだったんですか…(何それ怖いなぁ…)」
良く良く見れば兄のディオ兄さんによく似た顔立ちの少年はその形の良い眉を垂らし謝罪を口にする。ディオ?君は未だに警戒してるのかこちらを伺う様な視線を送ってきている。
「あ、そう言えば自己紹介がまだだったのう。私の名前は名前、名前・ブランドーじゃよ。こっちが」
「ディオ・ブランドー…」
ブランドーっていうことはやっぱり僕が会ったことないだけで幼い頃のディオ兄さんなのかなぁ?でも名前って言う兄がいたなんて聞いたことないし…もんもんと考え込んでいれば、名前が小首を傾げながら問い掛けてきた。
「君の名前を聞いてもいいかのぅ?」
「あっ、すみません!僕は晃って言います。」
「晃、ね。うん覚えたよ。それで、晃ちゃんみたいな可愛い子がどうしてここに?さっきも言ったけれど最近ここは人さらいが多いから早く家に帰った方が良いぞ?」
「(ちゃん?)そ、そうしたいのは山々なんですけど…帰り道が解らなくて…」
「おや…それは困ったね…」
「ううっ…」
自分でも情けない声を出してしまう。早くディオ兄さんのところに行きたいのに…
「ディオ、一人で家に帰れる?」
「!?」
「えっ?」
「私は晃ちゃんを送って行こうと思うんだ。」
突然の名前の提案にディオと晃は目を見開く。ディオは名前の服の裾をつかみ頭を激しく横に振り涙目で晃を睨み付ける。
「いいかい?ディオ。彼女は女の子なんだ、もし人攫いにあったら大変だよ。」
「え?」
「ん?」
「あの、僕女の子じゃあない、です…」
「え…?」
此処で晃は名前に対して感じていた違和感の正体を知る。あろう事か、名前に自身の性別を取り違えられていたのである。
名前自身もまさか男の子だとは思わず目を瞬かせた。
「お、男の子?」
「…はい」
「ご、ごめんね!可愛らしい容姿だったから!!あっ、男の子に可愛らしいは嫌だよね、ごめん!!」
「だ、大丈夫デス…」
わたわたと弁明する名前に乾いた笑しか浮かべられなかった。
―*―