結局食事をせぬままレストランから自宅に帰り、スモーキーも帰って僕ら三人だけになった。
僕はジョセ兄さんと一緒にエリナを彼女の部屋に送り届け、紅茶を淹れてくると言ってキッチンへと戻った。
何も食べる気はないとは言え、さすがにジョセ兄さんにはきついだろうとティーサーバーに茶葉と御湯を注いだ後、色が出るまでの間に簡単なサンドイッチを作る。
いくつか並べた後、ハーブを飾ってジョセ兄さんの座っているテーブルに置いて食べてねといえば小さく「あぁ」と「ありがとう」の返事が返ってきたのを確認して、僕はトレイに二人分のカップとサーバーを乗せてエリナの部屋に向かう。

紅茶の茶葉がお湯に広がり、じわじわと紅い色が出てくる様子をじっと見ながら、彼女の部屋の前に立ち止まる。

深呼吸をし、ノックの後の返事を聞いた僕はトレーを落とさないよう気をつけながら扉を開けた。


『エリナ、紅茶をいれたよ?のめる?』

エリナ「えぇ・・・」


一旦サイドテーブルに置いた後、ティーカップに紅茶を注ぎ砂糖を二つ入れて顔色の悪い彼女の前に差し出す。
自分の分をマグカップに注ぎ、角砂糖を三つ入れてスプーンでクルクルとかき混ぜる。

彼女が一口飲んでほっと溜息をつき少し顔色がよくなったのを確かめると、彼女と目があって僕も微笑んで紅茶を飲んだ。


『エリナ・・・石仮面について、どこまで聞いた?』

エリナ「・・・」

『君が聞いたすべてを、僕に教えてほしい。
ジョナ兄さんの代わりに、君を守るために、ジョセフを守るために。
僕は過去を・・・知らなくちゃいけない』


今の彼女にこんなことを頼むのは酷かもしれないと、眼鏡の奥の優しい瞳がまた揺らいだ事に罪悪感を感じつつも、僕は意を決して彼女に問う。


ジョセフ「なーんだよ、二人だけで内緒のお話し?
・・・俺にも、聞かせてくれねぇか?」

『ジョセにいさっ・・・』

ジョセフ「晃、忘れたわけじゃねぇだろうな」

『・・・わかった』


正直、ジョセ兄さんの言った意味が何の事かわからなかったけど、その目からは断固として引かないという意思が伝わってきて、頷いてしまった。
いや、ジョセ兄さんも知っている方がいいかもしれない。
できれば関わらせたくはなかったけど。


エリナ「わかりました・・・」


エリナは、手もとの紅茶が半分以上残っているティーカップを見つめたまま、少し震えている声で、だけどはっきりとそう言ってくれた。




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