いつの間にか

気付いたらそこにはもう"存在していた"。何の概念も無く忽然とそこに姿を現し、気が付いたらそこに居たのだ。
誰が、いつ、どこで、など聞きようがない。本人でさえも分かって居ないのだから


「(ここ、どこだ…)」


自分が浸かっている冷たい湖からザバリと音をたて岩に腰掛ける。なんで私は全裸で何も纏わず湖に居るのか訳が分からなかった。
そもそも自分は何でここがどこすらかも分からない。分からないことばかり溢れている

少し目を凝らせばはるか遠くまで見渡せる目を不思議に思いつつゆっくりと瞬きしながら考えた。辺りを生い茂る木々を一蹴し、さてこれからどうしたものかと水にギリギリ触れる程度に足を遊ぶように滑らせる。すると綺麗な波紋があたりに広がった。
ここは空気が澄んでて息がしやすい、以前はこう…もっと息がしにくくてもがいていたような記憶があったはずなのだが…、いやそもそも私に記憶はあるのだろうか?ううん??…ダメだ。考えれば考える程頭がこんがらがって来る。なるようになればいいさと半ば投げやりに天を仰ぎ見ると空は憎たらしい程青く晴れ渡っていた



*



「ちょっとあの子に話しかけてくるよ」

「え?ちょっとお忍びなの忘れてないよね?ねぇー!?あー…もう、!」


騒々しく賑わう街の中をふらふらと女目掛けて歩んでいく旧友の姿を見て、私は盛大にため息をついた。

あの緑頭は綺な女とあれば見境なく口説きに行くし顔の造りがいい為高確率でこちらに連れてくる。そんな友を見て鬱憤が貯まるのは決して悪いわけではないと思うのだ。
その友の名は"ダビデ"。ダビデとは幼少期に出会い省かせてもらうが、一方的に懐かれて仲良くなったかと思えばいつの間にか小さな少年から立派な一国の王となっていた。ここまで聞けばなんという素晴らしい少年だ、となるだろう。だが実際はかなりの女垂らしで自分がいいなと思った女は即妃へ迎える。そういえばこの前も妃迎えてたよね??
傍から見ればクソ野郎なのには変わらないが私から見たらダビデは手のかかる弟のような、どちらにせよ大切な友の存在なのだ。

メタァだが皆は唐突な流れにびっくりしているだろうと思う。そこを語らせて頂くと、まぁ長い年月の間私はあのなまえという自分の自我が芽生えた森で暮らしていた。

この体は大変便利で魔術という摩訶不思議な知識を莫大に保持していた。なんだこれ記憶ないし何をすればいいかよく分からんが俺TUEEEEでもしろと言うのか?なんて馬鹿な考えもよぎったけども(そもそもこの言葉がどこから出てきたかが分からない)、やっぱり初めは火力が無かったり効果が弱かったり応用が出来ずで全く使いこなせなかった。
そこでその莫大な知識を最大限使い鍛錬を行う。時間だけが豊富にあった私はこの生活を幾日も幾日も行って、今では使いこなせているであろうことは自負している。
服を魔力で編めば簡単な服にもなるため遠くから視ていた村や町には行かず森で暮らしていた。
しかも森は神聖な場所らしく人は一切立ち入らないし入るとしても入口にある大きな祭壇で数年に1度にある祭り、神への祈りや貢ぎ物をする時だけだった。
ここに暮らす精霊は信仰されているため上位なはずなのだが今ではかなり仲が良い友である。
親交の印として宝石だろう綺麗な石や不思議な文字の羅列などの装飾を施されたスタッフを貰った。媒体があることで以前よりも魔術行使が楽になったので精霊様々だったのも懐かしい。
よくあの森に遊びに行くのだが喜んで歓迎してくれるのは嬉しいものだ。こう、おかえりー!って全身で喜びを表現されたら嬉しいに決まってるじゃないか。

そんな森で精霊達とのんびり過ごしていたところに幼い羊飼いの少年、ダビデが子羊を追いかけ森に迷い込んできた。
そこで哀れに思った私がわざわざ道案内をしたのだがそこで私はダビデに気に入られてしまった。先程の懐かれた云々はこれである。なんで懐かれたのか?だって???そんなの私が聞きたいです!!!
まーーー…懐いてくれた子供を放っておけずたまに私がダビデの家に散策感覚で遊びに行ったりしているといつの間にかこの国の初代王に仕え、いつの間にか壮絶な逃走劇を行っていた挙句王様になっていた。

ホラーである。
もう一度いう、ホラーである。

友がいつの間にか境地に屈しかけてたかと思えば王様になりました〜!!とか笑えない冗談にも程があると思うのだ…。
そこからとんとん拍子で王様権限を行使され宮廷魔術士として王宮に住まわされ王の友として人々に認知されてしまった

そして今は流されるままに城下町へとお供させられ、ダビデの側近の者には貴方様が居るのなら安心ですと許可まで頂いてお忍びで来てしまった。意味がわからない

にこにこと微笑みながら女を口説くダビデをどうやって連れて帰ろうかと思案しようとするが面倒になったため考えることを放棄した。だってこれで口説くのは今日で…うん?何人目だっけ

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