かり

爪の合間に血が黒く固まっているのを見る。楊枝か、なにか細いものがあればこの場でこの黒い爪を処理できたが、今は何も手持ちにない。仕事終わりで、道具は全て同僚に手渡してしまっている。嵩張らないのは良い事だと思っていた数時間前までの己に舌打ちをしながら、窓から見えたコンビニエンスストアを指さし車の運転手に声を掛けた。

ピンポーンピンポーンピンポーンと妙に癖になる入店音に耳を傾けながら、化粧品コーナーを真っ直ぐ目指す。品揃えが良いあまり髪ゴムの横にベッドで使うゴムが並んでいるのを渋い顔で見ながら、その下にあるネイルケア用品を手に取った。除菌消臭エトセトラ。アルコールタイプのウエットティッシュも一つ手に取り、ついでに鞄にちょうど良いサイズのナッツ入りN&Nチョコを五つと炭酸水を一つばかり買った。レジでどさどさと品物を落とすと店員が顔を顰めたが、今の見た目には相応しい対応で「は?何?」と下から見下す。こんな対応をするような女学生は自分ならば犯し捨てるな、と思いながら、スカートのポケットから折り曲げた札を二枚取りだし放り投げた。

「お釣りはテキトーに募金とかでよろしく〜」

レジ袋を提げててってこと店を出る。店員の呼び声が聞こえた気もしたが、気にせず黒塗りの車に乗りこんだ。