夏色のキャンバス


でもそこにいたのは、この学校の養護教諭のぺ神先生で。


「……どうしてここに?」

「ぺ神先生こそ…… あ、そうだ。あの、先生! ここ、ここって社会部……社会同好会の部室でしたよね!? 昨日まであったのに、空っぽで……!」


私がそう訴えかけると、ぺ神先生は何かに気づいたらしく、私の抱えていたスケッチブックを抜き取りそれを眺めた後、その面の奥でクスクス笑い始めた。

そうして懐かしいなぁ、と声を漏らす。


「きっと彼らは、悩める君たちの背中を押すために、ここに来たんやね」

「……どういう意味、ですか?」

「……彼らはね、もう何十年も昔の生徒なんよ。ああ、もちろん今も生きてるで、ちゃんと。でもさ、彼ら卒業間際に言ってたんだ。特にグルッペンなんかはさ」



"「俺みたいに何かに躓いて、転んで、立ち上がれないとき。背中を押してくれるような存在に、俺自身がなりたいと思ったんだ。その思いがいつかの誰かに届けばいいと、そう思う。なぁ、ぺ神?」"



「グル先輩ってば……」

「じゃあ俺たち……グルッペンたちの想いそのものと過ごしてたんか? 幽霊みたいなこと?」

「幻覚、って言うんが妥当なんちゃう?」

「幻覚なんかじゃないよ」


不思議そうに私の顔を覗きこんだ2人に、ぺ神先生から返してもらったスケッチブックを目の前に掲げて言う。



「だって、ここにみんないるじゃない! あれは嘘でも幻覚でもない。確かに私たちの思い出にみんないる! ……だからこれは、」



みんなと出会えた"奇跡"だよ。
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