仕事を終え、体を伸ばす。
「…あー」
時計に目をやると、もう12時を超えていた。
4時間以上、ぶっ通しで書類を書いていたらしい。これは体が痛くなるのも無理はない。
「…雪降ってる」
通りで寒いわけだ。
この部屋の窓からだと、雪が降っていることしかわからない。あまりにも積もりそうなら、明日の内番に支障が出るだろうし、一度外に出てみようか。
障子を開けて辺りを見回すと、庭の向こうの廊下に人がいるようだ。
*
「……鶴丸さん」
「…君か」
真っ白な彼は、雪みたいだ。
「寒くないんですか?」
「寒いな……主、もう少しこっちに来てくれ」
「?はい」
鶴丸さんに近寄ると、私の体は浮いて、そっと下ろされた。
「なんですかこれ」
「俺の膝の上だ、あたたかいだろう?驚いたか?」
「ええ……」
鶴丸さんの羽織の中に入れられた。こんな寒い所にいるし、てっきり冷たいかとおもっていたからびっくりだ。
「なあ、主」
「何でしょうか」
「俺たちってなんなんだろうな…」
質問のようだが、問てない。
「…過去が変わるのを阻止したって、俺たちはどうにかなる訳では無いし、すべて終わったところで何も残りやしない、行く宛もない」
「………何言ってるんですか、あなたには帰る場所があるでしょう」
私も現世に友人がいるわけでも、家族がいるわけでもない。
帰る場所なんてないのだ。
「そんなところ、一体どこに…」
「この本丸です、それに私も。あなたは私の大切な鶴丸国永です。折れたってなんだってあなたはここを頼って、帰ってきて、いいんです」
最初は、居場所がなかった私の拠り所だった。
それが今では、沢山の刀剣男士たちが住んでいる。彼らの帰ってくるところになった。
「……おう」
そっぽを向いてのお礼、彼らしくない。
「鶴丸さん、戦いが終わったらあなたはどこかへ消えてしまいますか?」
「…そんなわけないだろ……政府に囚われでもしなきゃここにいる」
「それは嬉しいですね」
「なんなら主のこと攫って隠してしまいたいな」
「…神隠しですね」
でも、神隠しは名前を知らないとできないことだ。
通常は教えない。しかし、彼は私の真名を知っている。
「別に今すぐ隠そうなんて思ってないさ。俺が作られない、なんて歴史になったら元も子もない」
「…」
「…でもなまえ」
「はい」
彼の琥珀のような目と合う。すべてを見透かすような目だ。
「もし、全部終わってしまったら…終わったら、俺と一緒にきてくれないか?」
つまりそれは彼と一緒になり、もう二度とこちらに帰って来れないことを意味する。
しかし、既に答えは出ている。
「…もちろんですよ」
(そりゃ頑張らなきゃいけないな)
(それは当たり前でしょう)
(…君って本当可愛げが無いよな)
(でもそんな私を好きになったのは誰でしたっけ)
(っ、俺に決まってるだろ!!!)
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